過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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832:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/15(金) 21:57:59.81 ID:ijVZ6DH4o

 ファミレスの微妙な雰囲気での食事の後、何となく食事の時の席順そのままに車内の座
席が決まった。後部座席の二人がどんな気持だったのかはわからないけど、少なくともあ
たしは少し気まずい思いを抱きながら運転席のお兄さんの隣に遠慮がちに座った。

 お兄さんは後部座席の二人を気にする様子もなくシートベルトを締めてからエンジンを
かけた。そのまま車はファミレスの駐車場を出て海沿いの国道に滑り出して行った。

 海がある方向には海辺は見えず、海辺に沿って植えられている砂防林の松林が海と空を
遮っていて、周囲の景観に目を紛らわすことができないあたしは、何となくお兄さんが国
道に添って車を運転してる姿を見つめているしかなかった。

 海があるであろう方向に沈んでいく夕日に照らされているお兄さんの横顔。

 ハンドルを握っている男の子らしい無骨な手。

 まっすぐに正面を見つめているお兄さんの瞳の指しているその先。

 どういうわけかはわからない。けど、あたしはあたしのことなんかちっとも気にしてい
ない様子のお兄さんの顔をひたすらじっと見つめていた。時間が経過するに連れてお兄さ
んの横顔が夕日に染まっていく。

 後部座席を振り向くとお兄ちゃんも妹ちゃんも眠ってしまっているようだった。



「おまえも眠かったら寝ちゃっていいぞ」

 お兄さんが前方を見つめながらそう言った。

「あたしは自分の身が可愛いですから」

「おまえなあ。居眠り運転なんかしねえよ。てか初心者でそんな余裕なんてねえよ」

「そうじゃないです」

「じゃあ何だよ」

「自分の傍らで寝入っているあどけない美少女の肢体に対してお兄さんがついつい悪戯心
を出してしまったらあたしの身が危険ですから」

 冗談にしたってこの種の戯言を男の人に話すなんて初めてだった。兄友さんにならそう
いうことを言っていた可能性はあるけど、実際にそう言ったのはお兄さんに対してなのだ
った。

 お兄さんは会いかわらず前方を見つめながら笑った。

「そんなことを心配してたのかよ。俺は性犯罪者じゃねえぞ。そもそもあどけない美少女
なんてどこにいるんだよ」

「お兄さんに身体を悪戯されるくらいは許してあげてもいいのですけど、それ以上に運転
中に淫らな行為をしているお兄さんが運転を誤ったら生命維持的に大変なことになってし
まいます」

「そっちかよ」

「冗談ですよ」

「おまえの冗談はたちが悪い。心臓にも悪い」

「真面目に言うとお兄さん一人に運転させてあたしが寝ちゃうなんて申し訳なくてでき
ません」

「後部座席の二人にはそんな気遣いはさらさらなさそうだけどな」

「後ろの人のことは知りません。少なくともあたしは嫌なんです」

「んな気を遣わなくてもいいのに」

「・・・・・・そうですか」

「・・・・・・だんだんと道が空いてきたな」

「そうですね」

 このときにはさっきまでの渋滞が嘘のようにお兄さんの運転する車は速度を上げて海岸
沿いの道路を走り出していた。


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