836:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/15(金) 22:03:24.83 ID:ijVZ6DH4o
「海が見えた」
「本当ですね。綺麗」
いい雰囲気とはこういうことなのだろう。仲のよい兄妹である二人には二人だけの呼び
方やルールがあっても不思議じゃない。それにこの二人の仲がいいことなんて承知のうえ
であたしはお兄さんを好きになったんじゃないか。
お兄さんを好きになったんじゃないか・・・・・・。
あたしはこのとき初めて自分の心を肯定したのだった。もう誤魔化すのをやめて。
そうだ。あたしは夕暮れの海岸で、あたしのとなりで車を運転している人のことが好き
なのだ。
「まだ時間かかるんですか」
「ここまで来たら、もう少しだと思う」
「どこかで食材を調達するって妹ちゃんが言ってましたけど」
「今夜は庭でバーベキューをしたいんだって」
「いいですね」
「もう少し海辺を走ったら街中に出ると思うから、そしたらスーパーを探さないとな」
「それは任せてください」
「ああ頼むよ」
「何か夕暮れになってきましたね」
「昼飯が遅かったからな」
「ステーキ美味しかったですか」
「まあまあかな」
「せっかく選んであげたのに」
「だって筋が多くて固かったし」
「・・・・・・オムライスは?」
再びあたしの言葉は恥じることもためらうこともなく口をついて出た。
「へ」
「あたしが作ったオムライスはどうでしたか? 考えてみればまだ感想を聞いてなかった
です」
「美味しかったよ」
「よかった」
本当によかった。お兄さんの返事はお世辞かもしれないけど、もうそれすらどうでもい
い境地にあたしは到達していたようだ。
「何か落ちつきますね」
「そう?」
「はい。お兄ちゃんのことばかり考えていらいらしたり、妹ちゃんと口喧嘩になってたと
きよりは、今の方が全然いいです」
お兄さんは少し不思議そうな表情をした。あたしは笑った。
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