844:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/19(火) 23:00:51.12 ID:8/j3DU9wo
あたしはこれまで座席を決めるのはシャッフルに従うのだと妹ちゃんにもお兄ちゃんに
も強弁してきた手前、今さらその原則を崩すわけにはいかなかった。
「うん。じゃあ、本日最後のシャッフルです」
お兄ちゃんと妹ちゃんが同意した。でも、お兄さんはどうでもいいというように黙って
いるだけだった。それから別荘に着く間、あたしとお兄ちゃんは黙ったままだった。
妹ちゃんとお兄さんはぼそぼそと低い声で何か会話を交わしているようだった。あたし
はその内容が気になったけど、その会話を聞き取ることはできなかった。
別荘(お兄さんの言っていたとおりそれは別荘というよりは古い民家に近かった)に着
いてすぐ、あたしと妹ちゃんはバーベキューの支度をした。といってもコンロや焼き台は
お兄さんとお兄ちゃんが用意して炭火を熾してくれたので、あたしと妹ちゃんは食材を用
意して並べただけだったのだけど。
「ほら彼氏君、この肉取っちゃって」
「ありがと」
何だか昼間の二人のいい雰囲気は一見は続いているみたいだ。
「少し肉とか野菜を載せすぎじゃないかな」
さっきからやたらと妹ちゃんは肉や野菜を鉄板に置こうとしているようだった。
「そうかな? この方が景気がいいじゃん」
「食べる方が忙しい気がする」
このときお兄さんは庭の隅のベンチに座っていた。その姿はあたしとも妹ちゃんとのコ
ミュニケーションすら望まないように見えた。そういう様子のお兄さんに話しかけるのは
あたしにとってはハードルが高かったけど、妹ちゃんにとってはそんな障壁を全く感じて
いないようで、そんな彼女の振る舞いにあたしは密かに嫉妬した
「お兄ちゃん?」
「うん」
「何でそんなに隅っこで座ってるの」
「ちょっと疲れた」
「ずっと一人で運転してくれたんですものね」
あたしはようやく兄妹の会話に口出しすることができたのだ。
「おまえにそんな優しい言葉をかけられると混乱するわ」
「何言ってるんですか。お皿出してください」
あたしは持てる勇気を全て振り絞ってそう言った。そしてお兄さんが差し出してくれた
お皿に焼けた肉を載せた。
「お肉とソーセージですよ。ちょうどよく焼けてますから」
「ありがとな」
このとき、妹ちゃんが反撃した。彼女は鉄板の上の野菜を手許にまとめてお兄さんを眺
めたのだ。
「・・・・・・肉ばっかじゃん。ほら」
妹ちゃん邪魔。このときのあたしの正直な気持はそういうことだった。いったいお兄ち
ゃんは何をしているのだろう。
「何だよ」
「お皿貸して」
「ちょっと待て。ピーマンとか入れ過ぎだろ。玉ねぎももうそれくらいでいいって」
「子どもじゃないんだからちゃんと野菜も食べなよ」
「・・・・・・わかってるよ」
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