過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
1- 20
848:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/19(火) 23:03:28.24 ID:8/j3DU9wo

<夜明け前>




 昨夜は真っ暗でよく海辺の方を眺めることができなかったあたしは、朝なら眼下に海を
一望にできるんじゃないかと期待していたけど、古びた引き戸を開けて外に出たとき、ま
だ周囲は真っ暗な状態に近かった。

 庭の端に常夜灯というか庭を照らしている照明灯があったせいで、あたしはかろうじて
海岸に降りて行く小道を確認することができた。普段のあたしならこんな暗いところで崖
を下ろうなんて考えもしなかったろう。でも今朝のあたしの選択肢にはこのまま部屋に戻
ってお兄ちゃんと並んで眠るということは思いもよらなかった。

 滑ったり転びかけたりしながら何とか海岸に辿り着いた頃には、少しだけ周囲を見渡せ
るくらいに明るくなっていた。

 押し寄せる波頭の頂上で白く砕け散るのが薄く見えた。

 お兄さんと妹ちゃんは同じ六畳間の一室で何を語り合ったのだろうか。それとも言葉な
んかなくてあの夜のキスの続きみたいなことをしていたのだろうか。

 考えてももちろん結論なんか出ない。あたしはただここで立って邪推しているだけなの
だ。いったい今となっては何が正しいのだろう。お兄ちゃんと妹ちゃん、あたしとお兄さ
んが愛し合うカップルになることが正解なのか。それともそれがどんなにつらい道だろう
と、お兄さんと妹ちゃんは結ばれるべきなのか。

 それにお互いの親のこともある。お兄さんと妹ちゃんはまだ知らないと思うけど、妹ち
ゃんたちのパパとあたしのママは愛し合っている。別な言い方をすれば自分たちの配偶者
や子どもたちのことの気持を放置してまで不倫しているのだ。

 お兄ちゃんのしていることには賛同できないけど、そこまで追い込まれたお兄ちゃんの
気持は理解はできる。でもそれに味方していいのか。そしてその結果、あたしがお兄さん
と付き合えたとしても手放しでそのことに納得できるのか。

 波のざわめきがきにならないくらい、あたしは波打ち際で立ちすくんだまま悩んだ。そ
のとき背後の崖から物音がした。



「妹友か」

 どういう偶然なの。期せずしてお兄さんもこの朝、夜明け前の海岸を散歩しようと思い
立ったみたいだった。

「おはようございますお兄さん」

「ずいぶん早起きなんだな」

「たまたまです。何か目が覚めたら眠れなくなっちゃって」

「俺と同じだ」

「そうなんですか」

「眠れないから少し散歩でもしようかと思ってさ」

 こんなに悩んでいた朝にあたしはお兄さんと二人きりで話すチャンスを得たのだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1210.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice