861:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/27(水) 22:24:44.14 ID:cHjlU9dDo
<水族館>
その朝自分でもそこまでするとは思っていなかったことまでしてしまったことに驚き、
そして少し恥かしかったけど、早朝の光の下ならあたしの顔が赤くなっていたことにお兄
さんは気がつかなかったのだろうと信じたい。この場に及んでもあたしは冷静でクールな
女だとお兄さんに思われたかったのだ。
その後は悩む必要がないほど何もかもうまくいっているように思えた。妹ちゃんはあた
しとお兄さんが二人で別荘を抜け出したことなど気にしていないようだった。妹ちゃん一
人に朝ごはんの支度をさせてしまったことをあたしは謝ったけど、妹ちゃんは笑っていた
だけだった。ただ朝食はお兄さん好みだと聞かされていた和風の献立だったけど。
和やかな雰囲気はその後も続いた。何かもうこのままあたしとお兄さん、妹ちゃんとお
兄ちゃんとの二組のカップルが既定路線になったようだった。そしてあたしにはそのこと
を妹ちゃんもお兄さんも気にしていないように見えた。水族館までは自然に妹ちゃんとお
兄ちゃんが並んで後部座席に座り、あたしも昨日ほど自意識過剰にならずに助手席に座る
ことができた。
水族館のチケット売り場にできている長い行列には、妹ちゃんとお兄ちゃんが並ぶこと
になってあたしとお兄さんは入り口の脇で並んでおしゃべりをしていた
このときあたしはもう無理しなくていいかなという思いもあったのだけど、逆に言えば
これだけ自然に妹ちゃんとお兄ちゃんの自然な振る舞いを見ると、あたしとお兄さんが別
行動しても問題はないのではないかという気もしていた。お兄さんと二人きりでデートみ
たいに水族館を回れるならその方が嬉しい。
「チケットを買うだけでもう三十分以上もかかってるぞ」
お兄さんがうんざりしたように言った。あたしは別に何時間待ったって構わない。お兄
さんと二人きりでいられるなら。お兄さんは退屈なのだろうか。あたしは少し心配になっ
た。
「連休中なんだからしかたないですよ。それに並んでくれてるのは妹ちゃんたちじゃない
ですか」
「それはそうだけど、待っている方もつらい」
お兄さんがお兄ちゃんと二人きりでいる妹ちゃんのことを気にしている様子は伺えなけ
ど、あたしと二人でいることに嬉しがっている様子もない。今朝のキスはお兄さんにとっ
てはあまり意味のないことだったのか。あたしは予定どおりに行動することをこのとき決
めた。
「それよりお兄さん」
「どうした」
「海辺での約束、覚えてくれてますよね」
「・・・・・・それはまあ」
「妹ちゃんはきっと四人皆で行動しようと思っているでしょう」
「そうかもな」
「この人混みですから水族館の中はきっと観光客でごった返しているはずです」
「それは容易に想像できるな」
「はぐれましょう、わざと」
「はい?」
「ですから妹ちゃんとお兄ちゃんとはぐれましょう」
「・・・・・・何でそんな手の込んだことをしなきゃいけないんだよ」
「四人で見て回ろうって言われてるのにわざわざ二人きりになりたいなんて言いづらいじ
ゃないですか」
「それに本心では妹ちゃんだってお兄ちゃんと二人きりになりたいに決まってます」
「そうかなあ」
「あたしたちに遠慮して、二人きりになりたいなんて言い出せないだけですよ」
「まあ、妹友がそこまで言うならそうしようか」
1002Res/1210.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。