過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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883:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/30(土) 23:07:27.99 ID:50yeFttko

<あたしではだめですか>




 爬虫類パークは大混雑していた。そもそもチケット売り場に並ぶ以前に、駐車場に入る
のを待つ車の長い列ができていた。

 さっきからイグアナを楽しみにしてる妹ちゃんに話しをあわせていたものの、今のあた
しの関心事は決して爬虫類の類いなどではなかったから、あたしはこの長い車列を見ても
別にどうとも思わなかった。結局、時間節約のために駐車場待ちをしている間に平行して
チケット売り場に並ぶことになり、妹ちゃんとあえて志願したお兄ちゃんが車を降りて行
った。

 お兄さんと車内に取り残されたあたしは後部座席から助手席に移りたかった。でも夜明
けの海岸では何でもできたはずのあたしは、今では何もできなかった。妹ちゃんのお兄さ
んへの好意がより明白になった今では。その代わりにあたしはお兄さんに共依存の説明を
した。冷静に話しているつもりだったけど途中から思い入れも入って相当失礼なこと言っ
てしまったと思う。でもお兄さんは真面目に聞いてくれた。



「薬物依存みたいな悲惨な例とはちがうでしょうけど。根本的には同じじゃないですか」

「それだけの関係なら、何で妹ちゃんはさっきあたしたちが姿を消しただけでパニックに
なったんですかね」

「両親が不在がちな環境。寂しがり屋で家族大好きな妹ちゃん。そんな妹ちゃんが側にい
てくれる唯一の肉親であるお兄さんに依存したって別に変な話じゃないですよね」

「そして。お兄さんも妹ちゃんが大好きだった。それが妹への肉親的な感情なのか男女間
の愛情なのかは別として」

「それでも、お兄さんにとっては妹ちゃんのそんな依存が嬉しかったんでしょ? それが
唯一の生き甲斐になるくらいに」

「そうしてお兄さんと妹ちゃんの共依存の関係が始まった。妹ちゃんはお兄さんに依存し
て心の平穏を得た。お兄さんは妹ちゃんの心の平穏を保つことに自分の生き甲斐を感じて
きた」

「ね? 見事に教科書どおりの共依存関係が成立しているじゃないですか」

「さっきも言いましたけど。共依存は決して精神的に健全な状態ではないと言われています」



「おまえの言うとおりだとしてさ。俺はどうすればいいんだよ」

 お兄さんが打ちのめされたような暗い表情で言った。

「お兄さんも彼女を作ればいいんじゃないですか」

「何でそんな極端な話になるんだ」

「一生独身で妹の幸せを見守るなんて真顔で言っていること自体が共依存の典型的な状じ
ゃないですか。妹ちゃんにはお兄ちゃんがいます。お兄さんもいっそ女さんと復縁したら
どうでしょう」

「・・・・・・女のことは自分でもどうしたらいいのかわからん」

「じゃあ、あたしでは駄目ですか?」

 そのとき、あたしがようやく勇気を振り絞ったその問いに対する答を聞くことはできな
かった。妹ちゃんとお兄ちゃんがチケットを入手して帰ってきたのだ。


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