過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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884:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/30(土) 23:08:08.99 ID:50yeFttko

 普段なら本気ではしゃいでいたはずだったけど、実物のイグアナを見ても少しも心がと
きめかなかった。爬虫類パークではあたしは爬虫類を眺めるのに夢中な妹ちゃんと行動を
共にしていたから、あたしは無理に喜んでいる様子を装うことが精一杯だった。

 妹ちゃんが土産物屋でガラパゴスオオトカゲのぬいぐるみを前に唸って悩んでいたので、
少し休もうと思って自販機の前の休憩スペースに行くと、ベンチにお兄さんが腰かけてい
た。さっきの答が聞きたかったけどこんなところで催促するわけにもいかない。

「おう。おまえお土産買ったの?」

「ええ、まあ」

「ガラパゴスなんちゃらか」

「あれは大き過ぎます。何せ等身大だそうですから」

「そうか」

「あたしは諦めましたけど、妹ちゃんはまだ悩んでましたよ」

「あんなでかいぬいぐるみ、そもそも車に乗せられないだろうが」

 お兄さんのあたしに対する気持は聞けないので、あたしはさっきから心の片隅に引っか
かっていた小さな疑問をお兄さんにぶつけた。

「さっきは妹ちゃん、何でお兄ちゃんに電話しなかったんでしょうね」

「番号を知らなかったからだろ」

「そんな訳ないです。妹ちゃんはお兄ちゃんの携番とメアドは登録していますよ」

 知らないわけがない。二人は登校デートとか図書館デートのときだってお互いにメール
で打ち合わせをしていたはずだ。

「どういうこと?」

「さあ? 共依存にしても行き過ぎてますよね」

「何であそこまでお兄ちゃんに拒否反応を示すんでしょうね」

「さあ?」

「お兄ちゃんのことが嫌いなのかな」

「でもさ。図書館デートのときなんて彼氏君と妹は恋人つなぎして寄り添ってたし」

「結局、お兄さんがいない場合に限って、妹ちゃんはお兄ちゃんに素直に寄り添えるんで
すよね」

 思わずそう口に出したあたしは、喋ってしまってから改めてはっとした。意外にこれが

正しいのかもしれない。

「何だよそれ」

「いったいどっちが妹ちゃんにとって正しい姿なんでしょうね。お兄さんに依存している
妹ちゃんか。お兄ちゃんと普通に恋人同士ができている妹ちゃんか」

「何かよくわからんけど」

「わからないじゃなくてそろそろ考えた方がよくないですか? どっちが妹ちゃんにとっ
て幸せなのか」

 それは不公平でありよけいなことだった。今となっては本当はこの言葉はお兄さんに言
うのではなく妹ちゃんの方に言うべきなのだから。でもお兄さんは意外な言葉を口にした。

「あのさ。おまえ本当に俺のこと好きなの?」

「好きですよ」

 あたしは迷わず即答した。自分からは言うまいと思っていたけどお兄さんの方から口に
するなら話は別だ。


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