940:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/14(土) 22:15:39.74 ID:z+bJyO34o
それから二週間ほどたったころ、例の何とかという会の集まりがあった。何となく集ま
ろうという話が緩く持ち上がり、あたしは兄友さんに誘われてその集まりに参加した。
あたしたちの作戦が成功していたことはもうみんな知っていた。
おばさんに告げ口した後、突然妹ちゃんは校内にある学生寮に入寮することになった。
旅行以来学校でも妹ちゃんと全く口を聞いていなかったあたしは、その理由を直接聞くこ
とはできなかったけど、それを推察することは難しいことではなかった。
あたしはそのことを別れさせる会のメンバーに伝えていた。
「死にたい」
女友さんが言った。それを聞いた女さんも彼女から目を逸らして俯いてしまった。
「おまえら今さら何言ってるんだよ。自信をもって始めたことなんじゃなかったのかよ」
「だって」
「だってじゃねえよ。これじゃあ、おまえに乗せられて一緒に動いた妹友ちゃんがバカみ
たいじゃねえか」
「決行してから後悔するって、それは最悪の選択肢ですよ」
あたしも女友さんに言った。
「違うのよ。兄君と妹ちゃんを別れさせたことじゃなくて」
「あれよりひどいことしたの? おまえ」
「黙っているのも何か気持悪いから言うけどさ」
「どしたの」
女さんが顔を上げた。
「兄君がさ。校内で寂しそうだったから、ちょっと声をかけちゃってさ」
「声って?」
兄友さんが聞いた。
「いやさ。あたしたちのせいで兄君につらくて寂しい思いをさせちゃったとしたら申し訳
ないし。兄君、明らかに寂しそうにしてたから」
「はい? 何言っちゃってるのおまえ。おとなしい俺でもいい加減怒るぞ」
「何であんたが怒る必要あるのよ」
「おまえ、いったい兄に何したんだよ」
兄友さんと女さんが同時に言った。
「ロケに誘った。そんで飲みに言った。そしたら大学の変なやつらに絡まれたんだけど、
兄君が助けてくれた。彼、やっぱ格好いいよね。あの良さをわからない大学の女たちがバ
カなだけで」
「・・・・・・それで何で死にたいとか言うの」
元気のない声で女さんが言った。兄と妹を別れさせる会の中で、恐らくニ番目に罪がな
いのが女さんだったろう。そして一番罪がないのが兄友さん。
結果としてお兄さんと妹ちゃんの仲をおばさんに密告したあたしと女友さんが一番罪が
重いはずだ。でも、このときあたしはまだその罪の本質的な重さに気がついていなかった
のだ。そして、何だか落ち込んでいるらしい女友さんもその罪悪に気がついてはいないの
だろう。女友さんの死にたいと言う言葉から始まった懺悔は、とても重い内容だったのに
その口調はとても軽いものだったのだ。
1002Res/1210.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。