941:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/14(土) 22:16:58.46 ID:z+bJyO34o
「もうやだ」
女友さんが繰返した。
「だからやだって何がよ」
女さんが食いついた。彼女の気持を考えると無理もないとあたしは思った。
「助けてくれた兄君が格好よかったからさ。次の日に思わず」
「もったいぶるなよ。思わずどうしたんだよ」
兄友さんが聞いた。
「兄君に告ちゃった」
「だってあんた、もう兄君に告白して断られたんでしょ」
「・・・・・・嘘なの」
あたしたちは唖然として女さんを見つめていた。お兄さんと妹ちゃんを別れさせる作戦
は、二人を不幸から救うためだと女さんは言っていた。でもそんなことは誰も信じていな
かった。女さんが口を滑らせたようにそれは復讐でもあり、また、リベンジの機会を得る
ための自分勝手な行動に過ぎない。それを承知であたしはその行動に手を貸し、女さんは
積極的には加わらなかったけど、結局それを黙認した。
「じゃあ、いったい何で・・・・・・」
あたしと女さんの声が期せずして交錯した。
「好きは好きだったのよ。でも兄君と妹ちゃんを見ているととても勝てる気がしなくて
さ。モデルって言ったって兄君は全然そういうことに関心がないみたいだし。だから、二
人を別れさせてから告ればいいかなって思って」
そのためにみんなを集めたのか。あまりの身勝手さにあたしは言葉すら出なかった。
「それで?」
この場にいて唯一冷静だったのは兄友さんかもしれない。
「・・・・・・目的どおり兄君は家を追い出されて一人暮らしを始めたでしょ? それで学内で
も寂しそうにしてたから。慰めてあげようと思ってお弁当を作ったりしてね」
あたしも女さんも何となく不戦同盟を結んでいた錯覚を覚えていたのかもしれない。冷
静に考えればこんなにお節介でひどいことを共同でした以上、そこには暗黙の了解があっ
たはずだった。それはお兄さんに関しては、妹ちゃんと引きはがされたお兄さんがどんな
に弱っていようと、勝手に手出しをしないということだ。そうしないと、あたしたちのし
たことは単純に妹ちゃんからお兄さんを自分に奪い取るための行為となってしまう。
女友さんはあたしの考えが揺れていることなんかに構わずに話を続けた。何か一刻も早
く悩みを吐き出して楽になりたいかのように。
「そんで思わず告ちゃったの。前に言ってたのは嘘。でもそう言わないとみんな協力して
くれないでしょ?」
もう言葉すら出ない。さすがの女友さんもその場の雰囲気に何か感じるところがあった
のか、今さらながら言いわけを始めた。
「嘘言ってごめん。でも振られたわけだし結果的には嘘じゃなくなっちゃったから」
彼女はあたしたちに微笑みかけた。
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