過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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958:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/23(月) 23:50:41.61 ID:9s/yvZpko

「君だったんだね。初対面かと思っていたのに」

 妹ちゃんのパパは動揺する様子もなくそう言ってさりげなくママの隣に座った。

「紹介する必要なくなっちゃったね」

 ママが隣に座った彼を見て微笑んだ。

「でも一応言っておこうかな。この人は池山さん。あなたのお友だちの妹さんのお父さん
なの」

「・・・・・・知ってる」

「改めて今日は。妹友ちゃん」

 こんな人にちゃん付けなんかされたくない。あたしはむすっとして軽く頭を下げた。

 しばらく奇妙な沈黙の間があいた。

「あなた。あの話をしないと」

 あなたか。思い返せばずいぶん前からママはパパに対しては人称がない。あなたとも君
とも、名前ですら呼んでいない。人称がなくても不便でないのはきっとママがパパに対し
てあまり話をしないからなのだろう。ママにとってのあなたはこの人なのだ。

「いや、その前に」

 池山さんがあたしの方を見た。

「この間は息子と娘の情けない関係を教えてくれてありがとう」

 すっかり忘れていた。あたしは妹ちゃんのママを呼び出して二人の関係をちくったのだ
った。ママの不倫のことしか頭になかったあたしは完全に不意を突かれた。

「あ、あの」

 情けない。不倫男相手にどもってどうするのだ。

「妻から聞いたよ。一緒に旅行にも行ってくれたんだってね。あのバカ二人のせいで嫌な
思いをしたでしょう」

 あたしは黙っていた。

「教えてくれてありがとう。バカ兄貴は家を追い出したし、娘の方は寄宿舎に入れた
よ。ちょっと手遅れっぽいけど何とか引きはがせてよかったよ。妹友ちゃんのおかげだ」

「妹ちゃん、何か言ってませんでしたか」

 ママの不倫相手と話をするのは嫌だったけど、純粋な好奇心に負けてあたしはつい聞い
てしまった。

「正直に言うと修羅場だった」

 ちょっと辛そうな表情だ。妹ちゃんを溺愛しているこの人なら妹ちゃんの悲嘆はつらい
出来事だったのかもしれない。

「娘は兄に抱きついて泣いてたよ。こっちの方がおかしくなりそうなほど悲し気に」

「そうでしょうね」

「それに比べて兄の方は落ち着いてたな。本当に妹のことが好きならもっと取り乱しても
いいはずなんだ。その様子を見て私は思ったんだ。兄は妹のことは本気で好きになったん
じゃないって。きっとあの年頃にありがちな恋愛欲求を手近な妹ですませようとしたんじ
ゃないかって」

「そんなわけないでしょ」

 あたしは思わずため口で池山さんに反論してしまっていた。

「そうとしか思えない」

 池山さんが言い切った。


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