960:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/23(月) 23:54:28.61 ID:9s/yvZpko
<君みたいな子が兄と付き合ってくれたらいいのにね>
「・・・・・・君はなんで妻に兄妹の仲を教えてくれたのかな」
池山さんとママはきっとこのときのあたしの剣幕に驚いたに違いない。そのせいか彼は
しごく穏かにあたしに問いかけた。
「どんなに真剣に愛し合っていたとしてもその関係には将来がないから。多分、いつかは
ふたりとも不幸になると思ったから」
「そうだね。君は正しいと思うよ」
「でもやり方ってあるでしょ。いきなり二人を引き裂く必要なんかないでしょ。あなたは
ひょっとして妹ちゃんのことでお兄さんに嫉妬でもしていたのかしら。自分の娘をお兄さ
んに取られた気がしたんですか」
「いい加減に言葉を慎みなさい」
ママが口を挟んだ。この人にはそんなことを言う権利はない。
「へ〜。家族を裏切ったママがそんなことを言えるんだ」
ママは赤くなって俯いてしまった。一応、羞恥心という概念はを理解できていたらしい。
しばらく訪れた沈黙を携帯が鳴る音が破った。ママの携帯だ。
「はい。ええ・・・・・・あたし。これから? 何があったの」
ママは眼前のあたしを忘れて電話に集中していた。いつもそうだった。パパもママも携
帯が鳴った瞬間に家族のことに興味をなくすのだ。ママの好きな男がパパじゃなくて池山
さんになってもそれは変わらないらしい。池山さんの方はあまりママの様子を気にしてい
ないようだったけど。
「ごめん。中東のツアーがトラブってるみたい。あたし社に戻らないと」
「そうか。大変だね」
「何か空港がデモで閉鎖されちゃってツアーのお客さんが帰国できなくて足止めされてる
みたい」
「それは大事だね。すぐ戻った方がいいいよ」
「呼び出したのにごめんなさい」
「話はどうする?」
「あなたに任せてもいい? この子もあなたには心を開いているみたいだし」
「わかった」
「また連絡するね」
ここまで話を理解できないでいるあたしにママが言った。
「悪いけど仕事なんで社に戻るね。あとは彼から聞いて」
ママはそそくさと店を出て行ってしまった。
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