991:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/01/02(木) 22:24:27.79 ID:VuCMeMxFo
<あたしは今ではお兄さんと同じ池山姓を名乗っている>
それから数日後、朝目覚めて階下のリビングに下りていくと、珍しくこんなに早い時間
なのに、池山さんがそこにいて迎えてくれた。休日でも普段は朝早く出勤で家にいないの
が普通だったのに。
「おはよう妹友ちゃん」
「・・・・・・おはようございます。って、どうしてこんな時間に家にいるの?」
驚いた様子を見せないように冷静さを装って聞いたけど、内心では嬉しかった。
別にこの人に心を開いたわけではない。自分の選択の結果とはいえ、この家庭を選んだ
ことで結果的にあたしは孤独になったのだから。結局、この人が唆したようなあたしとお
兄さんが一緒に仲良く暮らす生活は手に入らなかった。それどころかお兄さんと妹ちゃん
は一緒に暮らしている。妹ちゃんは学校であたしを無視しているし、お兄ちゃんからも連
絡はない。そして兄友さんは何度メールしても返事をくれない。そういう原因を作ったの
はこの人とママだ。
それでもあたしは久し振りにこの家に人がいることが嬉しかった。
「もう少ししたら出かけるところだよ。朝食を用意しておいた。よかったら食べてくれ
る?」
「うん。ありがとう」
「君には父親らしいことをしてやれないから、たまにはこれくらいはしないとね」
池山さんが用意してくれた朝食を取りながらあたしは不思議だった。父親らしくも何も、
この人は自ら破綻させた元の家庭で父親役を演ずる上で朝食の支度はおろか父親らしいこ
とは何もしてこなかったはずだった。妹ちゃんを溺愛することを除いては。そのことは仲
違いする前の妹ちゃんからずいぶんと詳しく聞かされていたことだから、あたしの思い違
いではないと思う。
『パパって家事は何もできないんだ。食事の支度もお掃除も』
『ふーん。じゃあママが全部してるんだ』
『まさか。ママは何でもできるけど、パパと同じでお仕事が忙しいからね』
『もしかしてそれで妹ちゃんって料理部に入ったの?』
『それもある。せめてあたしが家の中のことを手伝おうかと思ってさ』
『妹ちゃんって偉いね。そんなパパじゃ家にいてもしかたないもんね』
『そうでもないよ。パパが家にいるとあたしは嬉しいし』
『・・・・・・何で?』
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