過去ログ - 妹と俺との些細な出来事
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994:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/01/02(木) 22:29:59.76 ID:VuCMeMxFo

「よく覚えていましたね。そんなに昔に作っただけの料理のレシピを」

 あたしは無理に兄妹の消息から話をそらした。

「こういうのって意外と忘れないものだよ。大事な人にはこれくらいはしてあげたいとい
つも思っているから」

「そうなんだ。やっぱり池山さんってお兄さんが大切なんですね」

「それは息子のことだからね。私は姫が好きで好きでしようがなかったし、前の妻ともそ
の気持だけは共有していたんだ」

 池山さんは笑った。

「どうしたの」

「その気持を込めた料理を久し振りに大事な人に作れて嬉しいよ。妹友ちゃんはもう僕の
大事な娘だから」

「あ、どうも」

「・・・・・・君はどうなの?」

「はい?」

「君は僕のことを人称抜きで呼んでるでしょ。一緒に暮らす前は池山さんだったけど、暮
らし始めてからは、池山さんともあなたとも君とも言わない。もちろん、パパとかお父さ
んとかもね」

「・・・・・・」

 最近はこの人のことは嫌いじゃない。でも、パパとかお父さんという呼び方は今はお兄
ちゃんと二人暮らしをしている本当のパパのためのものだ。かと言って池山さんと呼ぶの
は既におかしい。あたしは彼の籍に入って名前は池山となっていたからだ。皮肉にも、あ
たしは今ではお兄さんと同じ池山姓を名乗っている。そして妹ちゃんは今では学校の名簿
には結城妹と記されていた。それは妹ちゃんのママの旧姓ではないようだから、新しい父
親の姓なのだろう。

「変なことを言ったね。悪い。そろそろ私は出かけるよ」

 池山さんが立ち上がって上着を取り上げた。

「今日もお仕事なの?」

 相変わらず人称を省略してあたしは彼に聞いた。

「いや。今日は姫との面会日なんだ。楽しみすぎて今朝は早く起きすぎたよ。妹友ちゃん
に朝ご飯を作れたから結果オーライだけどね」

「・・・・・・そう」

「じゃあ、行って来るよ。姫と一緒に夕食をとってから帰るからね」

「行ってらっしゃい」

 池山さんが出掛けたあと、あたしは彼の整えてくれた朝食を食べることを諦めてシンク
の隅に捨てた。


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