110: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/09/17(火) 22:49:27.12 ID:KwFoDQjV0
靴紐を結ぶのさえほどほどにして、でも人ごみをかき分けて出ていく気もさらさらなくて、あたしはとにかく逃げ道を探す。こんなところで終わっていられない。あたしの理想の世界のために。
ステップを踏もうとした左足が地面から離れない。また靴紐を踏んだのだと気付いたときには、あたしはまたつんのめって、地面に倒れこんでいた。
がしゃん、と猟銃が音を立てて地面に転がる。あたしは慌ててそれを拾い上げた。暴発でもされたらたまらない。
と、あたしはそこで、自分が門の内側にいることに気付いた。
気づいてしまった。
と言うべきだったかもしれないけれど。
門は大破していた。自動車によって。だから、あたしが足を踏み入れることは難しくはない。
けれど問題はそのあとなのだ。あたしの推論が間違っていなければ、ここには――ここにも、能力者が。
ふと屋敷を見上げれば、窓の奥、僅かに開いたカーテンの隙間から、こちらを見ている人影があった。思わず猟銃を上げると、その人物はさっと屋敷の奥へと消えていく。
見られている。
はっとした瞬間に走り出していた。行く当てなどなくても、じっとはしていられない。
ぼうぼうに伸びた草を踏みしめて走る。左耳はその音が聞こえているけれど、右耳はいまだ不完全。午前とは違って耳栓をしていないからだ。
木陰で立ち止まってあたりを窺う。さすがに野次馬も屋敷の敷地内へとは入ってこなかった。もしくは、入れないだけなのかもしれなかった。
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