過去ログ - 青年「変身!!」
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22: ◆iIfvn1jtvs[saga]
2013/08/19(月) 23:09:56.85 ID:15qp5q7N0
それは欲求に似た感覚だった。
喉が渇いた時に水が目の前にあると飲みたくてたまらなくなる様な。
夜遅く帰った後に自分の寝室に着くと、眠りたくてたまらなくなる様な。
そんな動物の本能に似た感覚が青年を襲っていた。

心臓を貫きたい。
何でもいい。
今すぐに、自分の心臓を何かで貫きたい。
その衝動は彼をひたすらに駆り立てた。


「う、ぐ――――」


呼吸が荒くなる。
体の中の何かが早くしろと叫んでいる。
右手がいつの間にか自分の胸を触っていた。
それが心臓を探っているのだと彼は気付いた。

それでもなお、彼を彼のその衝動を縛っているのは理性と言う名の鎖だった。
それはごく普通の事だろう。
理性が無ければ、社会の秩序は失われる。
もし今あらゆる生物の理性が失われれば、一週間もしないうちに人類は滅亡してしまうだろう。

当たり前、と言えば当たり前なのかもしれない。
自分の心臓を貫きたいなどと言う衝動など、常識的に考えて正しい訳が無い。
明らかな異常。
誰かに知られれば即、精神病院送りだ。
それは世間一般で言う自殺願望と同義なのだから。


「苦しそうね。でも安心して。あなたはきっとあと少しで楽になれるから」


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