27: ◆iIfvn1jtvs[saga]
2013/08/19(月) 23:21:23.95 ID:15qp5q7N0
悔しい。
死ぬわけにはいかない。
ここで死ぬなんて、ごめんだ。
歯を食い縛り、渾身の力を込める。
膝が笑う。
肉体が錆びた金属の様に軋む。
視界が霞み、耳鳴りが聞こえる。
されど彼は止まれらない。
彼の生きる意志が止まる事を許さない。
生きろと、それは言う。
無駄な事を全て捨て、自分の本能に身を任せろと、それは言う。
彼を縛る常識と言う名の、理性と言う名の鎖が悲鳴を上げた。
彼を縛る鎖はすでに錆つき、壊れかけていた。
当然だ。
今の彼は人では無いのだ。
そんな彼に人の常識など邪魔なものでしか無い。
所詮そんなものは人間だった頃の名残でしか無い。
それは彼が非日常に無理矢理引き込まれた時。
そして彼が人間をやめさせられた時。
その目に光りが灯る。
それは決して全てを守りたいなどと言う正義のヒーロー染みた、光りでは決してなかった。
ただ身勝手な理由で未来を奪われた怒りが青年を突き動かした。
鎖はいとも簡単に音をたて引き千切れる。
常識を失った今、彼の心臓を指してはいけないという理性の鎖もまた、音を立てて砕け散る。。
青年の右手がポケットをまさぐり、そして一本のボールペンを引っ張り出す。
芯をノックし、ペン先を出す。
それは鋭くも無い、人を突くにはあまりにも適さない代物である。
だがそれでも、衝動を満たすには十分過ぎた。
奥歯を噛み締め、ボールペンを握りしめ――――そして。
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