8: ◆bvqVN1tP96Fx[saga]
2013/08/18(日) 19:56:58.07 ID:3zfOmQ280
少女が目を覚ます。名前は暁美ほむら。
今にも折れてしまいそうな華奢な体つきに艶やかな黒い髪の毛。
白くてか細い指が、赤いフレームを掴み上げる。
「目、覚めましたね。暁美さん、吐き気は無いですか」
「はい。胸は少し響くけど、体調は凄くいいと思います」
「それは良かった。輸液は交換しましたから。もし変だな、と思ったらナースコールで呼んでくださいね」
「あれ? 私のリボン知りませんか」
「床に落ちてたのでテーブルに置きましたよ」
看護師の手を振り払い、紅いリボンを強引に引っ張るほむら。
ある種の強迫観念さえ覚えるような振る舞いに、看護師から笑顔が消える。
それを横目に見た医師が空かさずフォローに回った。
「それだけ元気ならすぐ退院出来るでしょうね」
医師と看護師は微笑みながら病室を出て行った。
ほむらはその様子を気にも留めず、引き出しから新品のテキストを引っ張り出した。
「さて、勉強しないとね。半年も寝たきりだったんだもの」
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――――――――――――
「午前の検査結果が出ました。凄く良いですね。十六日にも退院出来ますよ」
「あ、ありがとう・・・ございます」
「来月予約入れておきますから、その時また経過を見ましょう」
「はい」
『編転入生の方へ』と書かれた書類を見て、気分を高揚させるほむら。
白に侵食された病室に春色の風が吹き抜ける。
見滝原中学校への編入が現実の物となった瞬間である。
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