過去ログ - 雪ノ下「比企谷君、今からティーカップを買いに行かない?」
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948: ◆GULJi96aoSzS[sage saga]
2013/10/26(土) 20:21:38.10 ID:t4lG1/uao


    ×   ×   ×   × 


「八幡、さっきから『揺するのはやめて欲しい』と言っているのだけれど……」

 雪乃が震える声で懇願してくる。


「俺は何も揺すっちゃいねえ……。おい、おい、急に引っ張んなよ。揺れて怖いだろうが」


 旅行3日目。
 俺と雪乃は奥祖谷の二重かずら橋にいる。

 ここにはシラクチカズラという植物の蔓で架けられているかずら橋が2つ並んでいる。
 別名「夫婦橋」と呼ばれる。
 この橋は足元が格子状に木が組まれているので、川の水面が覗いて見える。
 高所恐怖症の人間にとっては、かなりの絶叫スポットだ。

 この日は、香川県から徳島県に入った。

 脇町のうだつの町並み散策をした後、祖谷のかずら橋を回って奥祖谷までやって来た。
 雪乃は祖谷のかずら橋でも同様に怯えていたにもかかわらず、性懲りもなく二重かずら橋
にも行きたいと言った。

 それにしても、雪乃はいったいどういう学習能力をしているのだろうか。
 この植物だけで作られた吊り橋の上で、雪乃はさっきからフラフラしている。
 ただでさえ、その振動で橋が揺れているのに急に服を引っ張ってきて俺を急停止させてく
れるのだ。
 だから、さらに揺れてしまい、俺もかなりの恐怖を感じている。

 さすがにここでは、初日の「渦の道」のようにお姫様抱っこをするわけにはいかない。
 橋の真ん中で立ち往生してしまったのだが、どうすりゃいいんだよ?

 吊り橋で出会った男女は恋に落ちやすいだとかいう「吊り橋理論」なるものがあるが、今まさに
俺が置かれている状況はそんな理論とは真逆だ。
 恋ではなく、豊かな水量を湛える祖谷川に落ちてしまいそうだ。


「雪乃、頼むから引っ張らんでくれ。ゆっくりと手を引いて歩くから、それで辛抱してくれないか」


「ええ。……八幡頼むわ」

 雪乃は顔を赤らめているが、俺の顔は青ざめている。

 ちょっとこれって不公平じゃないか。



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