過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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375:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/14(土) 19:21:21.43 ID:Dg8mkFd4o

 今にして思えば滑稽な話だけれど、俺は人の死というものをテレビの向こうの出来事としてしかとらえていなかった。
 だから、祖母が死んだら、テレビでニュースとして取り上げられるような気がしていたのだ。

 もちろんそんなことにはならなかった。祖母はごく普通の人物だった。
 ニュースとして取り上げるに足らない人物。取るに足らない死。
 当時はそのことがすごくショックだった。

 火葬場からの帰りのバスの中、よく知らない親戚の男の人が話しかけてくれた。 
 そして言い聞かせるように「泣かなくて偉かったな。祖母ちゃん、天国で誇りに思ってるぞ」と言った。
 
 俺はそのとき、その人の言うことが本当なんじゃないかと思った。
 祖母が本当に俺のことを見ているような気がした。俺はそのとき初めて泣いたのだ。

 翌日の地方ニュースでは今年の初雪が例年よりもかなり遅い時期だということに触れていた。
 情報バラエティは月末に迫ったクリスマスに向け、流行を取り入れたプレゼントを特集していた。

 そのあとのニュース番組では、県内のとある住宅地で起こった殺人事件の詳細を報道していた。
 愛憎のもつれについて、コメンテーターが沈痛な面持ちでそれらしいことを言っていた。

 祖母の死については、誰もなにも言わなかった。どうしてそんなことを今でも覚えているんだろう。



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