過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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[saga]
2013/09/22(日) 16:40:38.34 ID:9lqdvaLCo
もう従妹は何も言わなかった。足音はいつのまにかすごく小さくなっていた。
「雨が降りそうだな」
俺がそう言うと、彼女も空を見上げた。灰色の空が静かに垂れこめている。
どことなく、空気も澱んでいるような、そんな気がした。
少しの沈黙のあと、従妹が不意に、とても小さな声で、ささやくように、
「それでも、おにいちゃんがそんな顔をしてるの、嫌だよ、わたしは」
そんなことを言ったけれど、それも、それだけと言ってしまえばそれだけのことだ。
だって彼女はいなくなってしまうんだから。
家に着くまで、俺たちは何の言葉も交わさなかった。
従妹は落ち込んでしまったようだったけれど、俺にはその理由が分からなかったし、そうである以上放っておく以外に方法がなかった。
少し無責任だと言う気もしたけれど、だからといって何かを言う方がよほど無責任だという気もした。
どうせ俺は彼女の望むようになんてできやしないのだ。
家に帰ると十時を過ぎていて、見計らったように細かな雨が降り始めた。
従妹は正午過ぎに少しの荷物だけを持って、父の車に乗せられて駅へと向かって言った。
俺たちはささやかな別れの挨拶だけを交わした。それ以上、特に言うべき言葉はなかった。
従妹が車に乗るとき、例のサンダルの踵がアスファルトと鳴る音は、とてもささやかだった。
雨の中で、その音は本当にちいさく聞こえた。
そして従妹が車に乗ると、それ以上は本当に聞こえなくなってしまった。
そのようにして従妹は俺の家を去った。当然のことだから、当然のように去って行った。
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