過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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498:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/24(火) 19:02:17.33 ID:1PtdhOx8o

「う、ん……」

 部長は指先でシャープペンを弄びながら唸り声をあげる。
 その仕草はいつになく真剣そうに見えたのに、どこか子供らしい愛嬌があった。

 部長はかわいい人だ。見ていればわかる。容姿もそうだけれど、穏やかで人好きのする優しい人だ。
 そうなんだよ、と俺は思う。部長はかわいい。そこまでは分かる。

 でも、かわいいからといって、それがどうなるというわけでもなかった。
 それはリンゴが赤いのと同じ程度の情報でしかない。髪が長いとか短いとか、その程度の情報。
 
 きっと三年くらい前の俺だったら、彼女を好きになっていただろうと思う。
 でもそれは部長に限ったことじゃなくて、たとえば後輩が相手でも、編入生が相手でも同じだ。
 
 かわいいな、と思う。仕草や行動を目で追いかける。言葉を交わす。そして好意を抱く。
 俺はたぶんかなり単純な性格をしている。だからきっかけなんて必要なかった。昔は。

 今の俺には人を好きになるほどの精神的な余裕がなかった。エネルギーに余剰がないのだ。
 人を好きになるというのはすごく体力のいることだし、好きで居続けることはより一層エネルギーのいることだ。

 ……いや、違うのかもしれない。
 自分自身を分析しようとする試みは、だいたいの場合、無意識の自己欺瞞に邪魔される。
 結局は何も言っていないのと同じだ。



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