過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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513:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/26(木) 19:37:50.55 ID:TcbpP0uzo

 思わず溜め息が出た。「すみません」と後輩が謝る。謝るくらいなら最初から言うな。

「何を考えているのか分からなくて、ずっと、怖かったんです。せんぱいのこと」

「そうだろうね。もともとあんまり人好きのするタイプじゃないしね」

 言い訳するつもりでもないけれど、精神的に余裕のないタイミングで他人に気遣える人間なんていない。
 ところで。
 どうして俺はこんな話を訊かされてるんだろう? わざわざ訊く気にもならなかった。
 
「だから、せんぱいが部活を辞めたあとも、元々やる気がなかったから、膝を口実に辞めたんだろうって思ってたんです」

「それは……無思慮だね」

 後輩は俺の言葉に少し傷ついたようだった。俺はそういう顔が出来ていないんだろうか?
 傷ついたような顔をできないような奴が、泣きたいときに泣けないような奴が、いつだって悪役だ。
 
「傷つきましたか?」

「少しね」と俺は言った。そう言ってみると、本当に少ししか傷ついていないような気分になれた。
 言葉は意味を矮小化させる。

 泣くなと言われたから強がる癖がついて、泣かなくなったら可愛げがないと怒られた。間抜けな話だ。
 それでも泣くのはいやだったから、泣きたいときには笑うようになった。どうして笑うんだと叱られた。
 
 数年後には、悲しかろうと楽しかろうと、泣きも笑いもせずに仏頂面をしている子供の出来上がった。
 誰を責めればいいんだ?
 



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