過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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517:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/09/26(木) 19:41:11.99 ID:TcbpP0uzo

「書いてくれませんか」と、長い沈黙の後、後輩は言った。
「なぜ?」と俺は訊ねた。
 もう書くことなんてできそうにない。俺は気遣う余裕を失うほどに混乱していたし、疲れていた。
 
 普段だったらこんな言い方しなかった。もっと器用にはぐらかしていた。 
 でももう無理なのだ。俺には何もできやしない。もうどうしようもないところまで来てしまったのだ。

「わたしはせんぱいの書いたものが読んでみたいんです。どんなものを書くのか、興味があるんです」

「自分と重ねたから?」

「……そう、かもしれません」

「だったら、自分で書くべきだよ。自分のことは自分で書くべきだ。本当は一人一人、個人的なものを書けばいいんだ。
 誰かの文章を読んだりせずにさ。そういうものこそ、本当は普遍的になりうるし、なるべきなんだ」

「じゃあ、わたしも書きます。だから、せんぱいも書いてください」

 交換条件にもなっていなかった。後輩は小さな声で話を続けた。

「入学してから、せんぱいと話をして、せんぱいがどういう人だったのか、知ろうとしたんです。
 でも、そうすればするほど分からなくなって、やっぱり怖いし、緊張するんです。
 本当にこの人があんなものを書いたのかって、不安になったんです」

「なあ」と俺は彼女の話を遮った。

「その話まだ続く?」

 また彼女は同じ顔をした。いいかげんうんざりしていた。彼女は少なからず傷ついていた。 
 でもそれがどうした? 俺だって傷ついてる。




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