過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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214:乾杯 ◆ziwzYr641k[sage saga]
2013/09/04(水) 01:41:38.94 ID:V6cReWvf0
壁の十歩ほど手前で上条がようやく立ち止まり、かと思うと振り返りざまに突きを放った。
男がバックステップでそれを難なくやり過ごし、一歩踏み込んで左右の拳を振り抜いた。

顔と胸部に一発ずつ。時間差の打撃が同じく打撃によって迎撃された。
ならばと中腰で繰り出した水平蹴りが、今度はジャンプしてかわされる。
逆に伸びきっていた足を膝蹴りで狙われたが、間一髪引っ込めて難を逃れた。
冷や汗ものの一時に、男が大きく息を吐き出した。

「――っぶねぇなぁ。てめえ、今折る気満々だったろ」

「それくらいしないとあんたは止まらねえだろ」

まだ完全に立ち上がりきっていない男に上条が駆け寄った。
繰り出された上段蹴りを、男は身を屈めてやり過ごした。
そのままタックルを仕掛けようとしたところを、今度は顔の高さに置かれた上条の拳が制止した。

「……ちっ」

決定打が一向に入らない状況に業を煮やしたのか、後ろに退くと見せかけた上条が一気に踏み込んだ。
その動きを男はしかと読んでいた。
やや大振り気味になったパンチを、首をひょいと傾けてかわし
相手の腕が引き戻される前に、素早く手首を捉えた。

「……やっと、捕まえたぜぇ」

「――ちっ!」

わずかに背中を反らす動きで、上条が何をしようとしているのかを男は正確に察した。
頭突きだ。
咄嗟に肘を畳み、それを支点にして上条の腕を引き寄せ、そのまま宙に放り投げた。
相手の勢いを利用した軍隊仕込みの投げ技だ。

足場を失った上条が咄嗟に空中で前傾姿勢を作り、床で一回転した後に立ち上がる。
その時にはとっくに体勢を整えていた男が、上条の無防備な背中に体当たりを繰り出していた。
上条が背後からの気配に気づき、咄嗟に振り返ろうとして、半身のまま男の突進をまともに浴びた。


「――ぐっ、はぁっ!」


上条の体が、あたかもバイクに跳ねられたかのように吹っ飛んだ。
子供に放り出された人形のようにごろごろと床を転がり続け――部屋の壁にぶち当たってやっと止まった。


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