過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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乾杯
◆ziwzYr641k
[saga]
2013/09/07(土) 23:13:59.80 ID:eVoQzYad0
「いや、ですから。家出少女を泊めるなんてのは激しく犯罪の香りがですね」
少年の声を右から左に聞き流しながら、少女は先ほどのやり取りを反芻していた。
「寮が近いって――そりゃそうすけど。つーか、先生んとこは無理なんすか?」
疑いをなかなか捨てようとしない自分に、月詠先生は根気よく説明してくれた。
要するに、自分の早合点だったのだと。
何かの間違いで、能力の発動とは無縁の理由で、たまたま意識を失っただけだったのだと。
「……はぁ、何だぁ。ただの一人相撲だったのねぇ」
さっきまで世界の終わりを迎えたような心地だったのが嘘みたいだった。
未だ雨は降り続けていたが、心なしか先ほどよりも空が明るい気がした。
「部屋が散らかってるって? それが何なんですか! はぁ? 教育的によろしくない? どっちが!」
少年の軽快な突っ込みを聞いているうちに、あるいは本当に安心してもいいのではないかと思い始めた。
測定のため朝から何も口にしていなかったことを思い出し、胃袋がしきりに抗議の声を上げ始めた。
「ねー、私、お腹空いたんだけどぉ」
「あ、わ、悪い! もうちょっとだけ待っててくれ」
受話器から口を離して謝ってから、少年が通話を再開した。だが、それも長くは続かなかった。
「……はぁ、わかった、わかりましたよ。とりあえず部屋には連れて行きます。んじゃあ、約束ですよ」
結局説得されたのか、着替えどうすっかなーなどと独り言を呟きながら、少年が携帯を畳んだ。
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