過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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乾杯
◆ziwzYr641k
[saga]
2013/09/07(土) 23:31:35.85 ID:eVoQzYad0
「もっとちゃんとこっちに寄ったらどうなのぉ? あなたの傘なんだし」
「こんだけ濡れちまってたら、あんまり変わんねえだろ」
さほど大きくない傘にお互い身を寄せ合いながら歩いた。
大通りに人陰はまばらで、すれ違いに手間取ることはない。
すっかり安心しきったことで、ある程度物事を考える余裕が生まれていた。
たとえば、この人はどんな経緯で自分を探すことになったのか。
何から聞こうか迷っているうちに、ふと肝心なことを聞いていない事実に思い当たる。
「あの、お兄さんのお名前は?」
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったっけな」
少年が一人納得したようにうなずき、歩調をこちらに合わせたまま――
「上条当麻だ。よろしくな」
そう言って軽く会釈した。
「……カミジョウ、トウマ。ふぅーん」
「こら、さんをつけろよ。一応年上なんだし」
その名前と、困ったような笑顔と、繋いだ手の温かさが、頭の中にすっと染み込んでいくのを感じた。
「カミジョウ、さん」
「よろしい。んで、君はミサキちゃんでいいんだよな」
「食蜂操祈よぉ。あっ、漢字はねぇ――」
名乗り合った後、何を話したかはろくに覚えていなかった。
ただ、寮につくまで私たちの会話が止まらなかったのは確かだ。
結局その日は、彼の部屋でシャワーを浴びさせてもらい、店屋物を食べ終えてからすぐに寝入ってしまった。
身に降りかかった災難を解決してくれたのが他ならぬ彼であると知ったのは
それから二週間も経ってからのことだった。
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