過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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256:乾杯 ◆ziwzYr641k[saga sage]
2013/09/08(日) 00:50:04.88 ID:3H1ykXf50
「あの、本当に詳しいことは知らないんですよ? 私は、気を失った人たちが安置されてた部屋に彼を案内しただけで」

小萌が懸命にハンドルを切りながらそう言った。
これ以上レストランでは話せないということで、小萌の車の中に移動していた。
小学生並に座高が低くて果たして前が見えているのか、否応にも気になる。

「その後に意識が回復したんだったら疑いの余地はないじゃないですか。私自身が洗脳をどうやって解こうとしても解けなかったんですよ?」

「でも、偶然ということだって……」

「その前にだって、色々処置を講じていたじゃないですか。あれだけやって駄目だったのに、何もせずに覚醒するなんてありえません」

そんな単純なことにも気がつかないほど、あの日の自分はパニクっていて、そして浮かれていたのだろう。
その様子をあの少年はどんな目で見ていたのか。
当日のことが克明に蘇り、歯痒いような、腹立たしいような、複雑な気持ちに囚われる。

「先生はあの日、上条さんに電話でなんて伝えたんですか?」

「ええと、確か――」

首をかしげてから、前方に注意を払いながらポツポツと話す。

「能力開発中に事故が起きて、被験者が意識を失ってしまった、みたいなニュアンスで伝えました。
その、あの時はあなたの捜索より先に、救助を優先するべきだと判断したんです」

「後回しになったことは気にしてません。実際それで助けられたわけですし、的確な判断だったと思います」

桜の並木道は閑散としていたが、既にいくつかの蕾が付き始めている。
あとひと月もすれば自分も中学生だというのに、なんの実感もわかなかった。


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