過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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291:乾杯 ◆ziwzYr641k[saga sage]
2013/09/11(水) 07:29:39.08 ID:bCBZW/S80
一か月後。
書類上在籍していた、ろくに通ってもいなかった学校に卒業証書を受け取りにいった帰り道。
少女は小走りで小萌と待ち合わせしている場所へと向かっていた。

途中、行く先々で下校中の学生たちと出くわした。
誰もがが新生活に胸を期待で膨らませ、友人たちと楽しそうに他愛ない話をしているようだった。
同じように進学を控えているはずの少女が、その横を無言で追い越していった。

「何? あの子、感じ悪」

「ほっとこうよ。関係ないじゃん」

そんな陰口に構っていられないくらいには、少女はこれからのことについて頭を悩ませていた。
計画を完遂させるためにすべきことが山ほどあったし、そもそも新しい生活を安穏と享受する資格など自分にはないと信じていた。

かつてたった一人の友達が息を引き取ったその後で、醜い真実に気づいたとき。
少女はたとえようのない憤りを感じるとともに、ほんのわずかながら安堵してしまった。
大事な友達が、自分の苦痛に起因しているものを知らないままに、あの世へと旅立ってしまったことに。
悪意を向けられずに済んだことにほっとしてしまったのだ。

自分の心の醜さに、少女は強烈な吐き気を覚えた。
実際に吐いたし、許されないとも思った。
なすべきことを考え続け、そしてやっと、一つの答えを得た。
彼女を犠牲にして得た素晴らしくも恐ろしい能力を、彼女を壊した者たちにこそ知らしめてやろう。
それが幼くして天に召されてしまった友達に、自分ができる唯一無二の供養であり、償いなのだと。

そうでもしなければ、記憶の中に未だ存在するあどけない瞳に、今度こそ顔向けできなくなる気がした。
その決意を差し置いてでも優先すべきものなど、少女にはなかった。

そのはずだった。


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