過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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乾杯
◆ziwzYr641k
[saga sage]
2013/09/11(水) 07:53:43.12 ID:bCBZW/S80
「常盤台じゃ外出時に制服着用が義務付けられてるんだってな」
鼻を近づけてみると、新品特有の革の匂いがした。
「先週の日曜日に、店員さんのアドバイスを参考にしながら、サマーセーターに合いそうなやつを」
質感を確かめるように、革に何度となく五指を滑らせてみる。
「何しろ名門のお嬢様校だからな。できるだけ高級感つうか、見栄えのするやつを選んだつもりなんだけど」
チェーンを実際に肩にかけてみたり。
「色々見回ったところで、新興ブランドのバーゲン品くらいしか手が出なくってさ。あ、値段は聞くなよー? 聞いたらがっかりするぞー?」
そのままくるんと一回転してみたり。
「って、おーい、ミサキちゃん?」
「え、あ、ち、違うわよぉっ! そうじゃなくてぇ!」
「……へ?」
「しゃ、釈然としないじゃなぁい! 恩送りだなんて格好つけてたくせに、何でこんな――こんなの――」
端的に、こういうシチュエーションに慣れていないのだと思い知る。
こんな時に限って思いと裏腹の言葉しか出てこない。
テストで満点を取っても、コンクールで賞を取っても、誕生日やクリスマスだって。
ここ最近、何かをもらった覚えなどなかった。
くれる誰かが傍にいたこともなかった。
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