過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」 その3
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345:乾杯 ◆ziwzYr641k[saga sage]
2013/09/27(金) 00:09:23.72 ID:wmsLYaSN0
脳が急所を守るべきだと告げ、体が瞬時にその命令に従った。
長年培ってきた戦闘勘が腕を畳み、頭を低くし、痛めている脇腹と急所である頭部への攻撃に備えた。

右肩越しに、少年が拳を振り被ろうとしているのが見えた。
一発だけならくれてやる。耐えて、あわよくばカウンターを見舞って終わらせてやる。
そんな強気な思いは、次の瞬間あえなく霧散した。

振り上げられた右拳は、ほとんど動いていない。代わりに、男の視界が地面に向かって傾いていく。
体により近かった、死角になっていた左足で、無警戒だった軸足を引っかけられたのだ。

                、、、、、、、、、、、、
「人一倍プライドの高い女の子が、俺のために頭を下げたんだ」

一連の動作――顔に向けられた視線から、反撃に転じる挙動から、力強く握り締められた拳までもが――全てフェイントだった。
ようやくそれに気づいたが、もう手遅れだった。
ダメージにもならない、そっと押すような足払いを受けて。
支柱を失って崩れ落ちる建物のように、全身に込めたはずの力が行き場をなくしてさまよっていた。


「たとえ相手がどんなに強くたって、背負ってるモンが俺の何百倍重くたって」


何とか体勢を立て直さんとする思考の間隙を縫い――


「悪魔に魂売ってでもケツ捲るわけにはいかねえんだよッッ!!」


男の視界に今度こそ、上条の右拳が飛び込んできた。

全体重を一所に集約した一撃が頬に叩き込まれ、薬物で鋭敏になっていた神経細胞が悲鳴を上げた。
全身に電撃を浴びせられたように男の体が慄き、そのまま床に強かに叩きつけられた。


上条がゆっくりと拳を引き上げ、両膝に手を突いてぐっと体を支え、深く息をついた。
大の字に寝転がった男に、動き出す気配はもはやなかった。


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