過去ログ - 吸血少女と待つ夜明け
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128:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/31(土) 05:25:03.48 ID:EaOumZa8o

 車のラジオからはニュースが聞こえてきた。
「夜九時ごろ通り魔事件がありました。――さんがナイフのようなもので刺されて軽傷。命に別状はなく……」
 僕は窓を開けた。
「なんか潮の匂いがしない?」
「そう?」
 隣の彼女が首を傾げる。
「すると思うけどなあ」

 言いながら僕は首筋から肩にかけての部分を片手で撫でる。
 ほとんど消えているが、牙の跡が少しだけ残っている。
 彼女はそれをじっと見つめていたが何も言わなかった。

 車はそれから小一時間ほど走って、ある道路脇に停まった。
 ドアを開けると、今度こそ濃厚な潮の香りが鼻をツンと刺激する。
 彼女は歓声を上げた。
「海だあ!」

 うす暗い空の下に、黒い海が穏やかに打ち寄せては返している。
「わたし、海なんて何年ぶりだろう」
 叫ぶように言いながら水際に走っていく。
 僕もゆっくりその後を追う。



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