53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/28(水) 08:52:12.55 ID:+sQYBrzRo
夜道を進むと前の方に男女の連れが見えた。
男が少女の肩に腕をまわしている。
その時は羨ましい程度にしか思わなかった。
ヒナとあんな仲になれたらな、とか考えていた。
そして距離が詰まって気づいた。
心臓がいやな音を立てて一度だけ脈打った。
血の気が少しずつ引いていく。口の中がちりちりと乾いてくる。
見間違いかもしれない。思いついて、そうであることを願った。
しかし少女の後ろ姿。長い黒髪、細い肩。腕や脚の白い肌。
……ヒナだ。
僕は慌ててその隣の男に目を凝らした。
こちらにも見おぼえがある。
背の高いやせ形。だが肩幅は広い。ワイシャツ姿のその男は。
アルバイト先の苦手な、あの正社員だった。
ホテルに入っていく二人を、ビニール袋を手に提げたまま、僕は呆然と見送った。
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