40:以下、新鯖からお送りいたします
2013/09/07(土) 21:59:07.93 ID:1vEtWVYko
後に勇者と呼ばれる少年が、兄にそう告げると、兄はあ、なんか断れない雰囲気といった様子でホイホイと付いていってしまうのだ。
だが、後に私は思う。兄はその少年にちょっとした想いを抱いてしまったのではないか。
少女のような端整な顔立ちのその少年は、正直言って頼りなく、そして何処か情けない雰囲気を持っていた。
しかしそれが、闇の軍勢を率いる魔王を打ち倒すと言い出したのだから、兄も私も笑いを堪える羽目となっていた。
そうして少年がトトリコ村に滞在して数日、兄は彼と随分親しくなっていた。
兄が自警団の一員として活躍しているところを目撃した勇者は、兄を仲間に誘うようになる。
そこで、二つ返事で頷いてしまった兄は、何だか妙に嬉しそうな面持ちだったのを覚えていた。
「……勇者め、私の兄を今頃……あんな事やこんな事をして弄んでいるに違いないわ」
思い出すと腹が立つ。結果的に農場は私に引き継がれる事となったのだが、一人で経営は不可能に近かった。
敷地の半分を畳み、芋と米のみに絞ることになったのだが、やはりシリルの力を借りなければ経営は不可能。
「はぁ、お兄ちゃんはどうでもいいや。私達を捨てたんだから。それよりもシリルを捜しに行かなきゃ」
再び家を飛び出す頃には、太陽は既に山脈に浸かった状態であった。いよいよ夜がやって来る。
平和な村であるトトリコですら、村人は夜は家に戻るようにと自警団を中心に警戒を行っている。
最近、夜襲が絶えない。はぐれなのだろうか、魔物が度々目撃されるようになり、
自警団の動きも活発にはなっているが、何分小さな村の自警団、やはり人手不足は否めない。
「シリル、無事だと良いんだけど……」
私が茂みを進み、滝のある方へ歩みを進めていると、徐々に空気に湿り気を感じるようになる。
川が、滝が近いのだ。その爽やかでもある空気をついつい堪能しつつ、シリルが居ると思われる滝へ向かうのだが……。
シュルルルルル、という音がした。蛇のような、しかしどこか獰猛な呻き声。
嫌な予感がし、立ち止まっては周囲を警戒していたその直後、>>41
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