132: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/03/21(金) 11:45:16.91 ID:pa8+cNPho
柔らかく?を撫ぜる風に彼女は目を細めます。
にゃあと先導する黒猫が鳴き、丁字路を左に折れました。
静かだった裏路地にも少しずつ大通りの喧騒が近づいてまいります。
「だからかしら? こうしてお互いに会話を交わしたのなら、きっと、この出会いは意味のあるものだったと思えるんです。」
再び路地を折れると、より一層人々の声や行き交う自動車のエンジン音が大きくなってきます。
もうすぐ終わりを迎えるのでしょう。
「私は、貴女やあの男性のように食事代を持つことは出来なかったけれど。」
狭まった道は次第に広がり。
「代わりの験担ぎを思いついたんです。」
見知らぬ景色から、少しだけれど見覚えのある景色に変わって。
差し掛かかった十字路を、猫ちゃんは私の思った通り右へと折れました。
「だから、ここでお別れしましょう。お互いのことをよく知らない二人として。
色々と聞いてみたいことはあるけれど、それは次の機会に。それが私の験担ぎ。」
にゃあと鳴く猫ちゃんの声も、人々の声に掻き消され私の耳には微かに届くばかりです。
長い路地を抜け、駅近くのアーケードに私たちは立っていました。
「今度あった時、まずは貴女のお名前を教えて下さいね?
もし、私たちを運命の糸が繋いでいるのなら、きっとその日が来ると思うんです。」
燃えるような夕焼けを背に彼女は言います。
指切りをするように、ぴんと小指を立てて。
「きっと、私たちは繋がってると思いますよ。」
小指を立てて、彼女にそう返します。
きらきらと。
彼女のその指が、光を反射して煌めいたように見えるのでした。
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