137: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2014/03/21(金) 11:50:33.11 ID:pa8+cNPho
なんとか両親を説得した私は、東京にある事務所の女子寮へと居を移しておりました。
隣室には、同じく岡山でスカウトされた藤原肇さんを迎えております。
地元がそこそこ近く、同じく地方から出た身ともあって、彼女とは今も随分と仲良くさせて頂いています。
趣味の話となり、自作の、失敗した茶碗をテレビで流された時は恥ずかしかったと彼女は言いました。
偶々それを見たことを伝えると、真っ赤になって「あうあう」と言葉にならない呻きを漏らす彼女はこの上なく可愛らしくありました。
それからトライアドプリムスの三人を加え、話はスカウトされた時のことに移ります。
「あ、それ聞きました。何かの宗教みたいだって言ってたって。」
加連さんがスカウトされたことを話すと、肇さんは言います。
私もテレビで見た覚えがありました。
「ああ、プロデューサーが言ってたんだ。
唯でさえスカウトなんてアヤシイ仕事してるのに、胡散臭さを足さなくてもいいよね。」
加連さんはからからと笑います。
肇さんの時のことはどうだったのかと、凛さんが問いかけると彼女は「太公望でした」と答えました。
「太公望?」
「はい。釣り糸を垂らしている時に声を掛けられたんです。釣れますかって。」
くすくすと笑う彼女。
凜さんの時はどうだったのかと、可愛らしい笑みを浮かべたままに尋ね返します。
「私の時? 別に普通だったかな。何でも最初にスカウトしようと決めたのが私だったみたいで。」
「凛はプロデューサーのハジメテのヒトだもんね。」
からかうように言う加連さん。
「その言い方禁止!」
少し声を荒らげる凛さん。
そんな二人に溜息を溢し、私のことを聞いたのは奈緒さんでした。
「茄子さんの時はどうだったんです?」
「私の時ですか? 私の時はシンデレラでした。」
「うわ、プロデューサーが考えそうなことだ。」
「ふふっ。CGプロでそれらしいですものね。」
「で、なんて言ってきたんですか、あのプロデューサー。」
「俺は魔法使いだって。」
「それでシンデレラになるって決めたんですか?」
一通りからかい終わったのか、加連さんが言います。
「いいえ、私は魔法使いになりたかったんですよ。」
「どういう意味ですか。」
あっけらかんとした彼女とは違い、すこしうんざりとした表情をみせる凜さん。
私は彼女に答えます。
「私は皆を笑顔に、幸せにしたいって思ったんです。
一番上に届かなくても、私の姿を見て誰かが笑顔になってくれるのならばそれで良いって。」
「あれー? どこかで聞いたことある言葉だねぇ。」
茶化すような加連さんの言葉に、「知らねぇ」と奈緒さんはそっぽを向くのでした。
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