50: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/09/16(月) 20:28:18.11 ID:jugo19V7o
  
  バスルームから出ると濡れた髪もそのままに私はベッドへと腰掛けます。 
 我ながら少しお行儀が悪いかも知れません。こんな姿を母に見られでもすれば、たちまちに有難いお小言を頂くに違いないでしょう。 
 肩に掛けたタオルで髪の湿り気を取りながら、リモコンの電源ボタンを押します。 
 もはや普及しきった液晶テレビが音もなく画面を映しだしました。ぶおん、と鈍い音を発するブラウン管も今では目にする機会は殆どありません。 
 幼心には、あの音ひとつでわくわくと胸を弾ませたものでした。今から面白いものをお見せしますよと、テレビが一声かけてくれていたように思えたのです。 
 映像は綺麗になり、場所も取らなくなった液晶テレビは確実にブラウン管よりも進化したと言えるでしょう。 
 それでも。 
 慣れ親しんだ音が聞こえないというものは、何だか無性に寂しくなるのものでありました。 
  
  
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