過去ログ - 監督役「聖杯戦争を運営する」　その３ -SS速報VIP

過去ログ - 監督役「聖杯戦争を運営する」　その３

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282: ◆7F1xhg7Fvs[saga]
2013/11/05(火) 21:57:05.15 ID:xJJCCnyKo
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　SETTINGS

　◆人物背景

　江戸時代、平和が続いたことで刀の需要は緩やかに落ちていく。
　刀が使われない。無くならない。刀は保存され、子へ孫へと引き継がれていく。
　名刀を求めるなら古刀で良い。新しい刀を作る必要が段々と無くなっていった。

　時の将軍吉宗が作刀技術の保存・育成を目指し、各地の刀匠を集めて江戸で鍛冶を奨励するが
　各地から名のある刀匠を引き抜いたことで、逆に地方の鍛鉄技術は衰退。
　享保の大飢饉の後、もはや飾り物と化した日本刀を買う余裕など、人々は持ち合わせていなかった。

　飢饉から四十年ほど、セイバーが活動した時代は、そのまま刀匠にとっての暗黒期と一致する。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　◆

　セイバーが生まれたのは、享保の大飢饉の翌年。イナゴに喰い尽くされた土地だった。
　売れずに残された刀をいじくって育ち、父の十一代目国重と死別した後は、叔父に引き取られた。
　このときには、水田国重派は著しく衰退し、農耕具作りの仕事すら無く、ほとんどが刀鍛冶を廃業している。

　セイバーの婿養子が十二代目国重の名を継いだが、この男も病に伏せり、技術継承を終えられない。

　水田国重派が滅びるかと思われた時、セイバーの叔父は提案する。女人禁制の律を破り、源に国重の技を継がせよう、と。

　◆『女国重』
　
　刀は一人で作るものではない。刀身、柄、鍔、研ぎ、鞘、塗り。全てに専門の職人がいる。
　だが大月家は魔術師の家系であり、その刀剣は神秘の結晶であるがために、他所の職人には見せられなかった。
　大月の当主は、全ての作業を一人でこなさなくてはならない。それはこれまでの当主には重荷だったが、セイバーには救いだった。
　
　女身で鍛えた刀など、他所の職人には見せられない。鍛冶場は女人禁制だ。
　鍛冶場の神は女を嫌う。女が近寄るだけで鉄が穢れる。そう考えられていた時代、一人で作刀の全工程を行えたのは大きな利点だった。
　もしセイバーが刃を打つことしかできなかったなら、きっとその刀を完成させてくれる者は現れなかっただろう。
　
　セイバーに鍛冶の道を選ばせたのは、魔術師ゆえの執念だ。魔術師だったからこそ、その技が失われることが許せなかった。
　魔術師だったからこそ、そこには作刀の全行程の知識があり、魔術師だったからこそ、魔力で筋力を補えた。
　そもそも、女人禁制などと言っていては陰陽は完成しない。天と地、男と女、光と闇、両極の調和にこそ陰陽の極意がある。
　ならば、大月家に女性刀匠が生まれるのは、ある種の必然であったのかもしれない。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　◆

　セイバーの客には変わり者が多い。元より女の鍛える刀を求める者など変わり者に決まっているのだから、当然と言えば当然だろう。
　また、刀屋・組合を通さずに全てを一人でこなすスタイルは、秘密裏に刀を打ってもらうのにうってつけだった。
　結果、表に出せない魔術礼装や禁制品ばかりを作ることになってしまった。表向きには、長命のわりにあまり刀を作っていない、とされている。
　
　武士ですら持つことを許されない長さの刀を求めて、一人の農民がセイバーを訪ねて来たことは、これとはまた別の英雄の話になる。

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