15: ◆delkBMjP.Ce4[saga sage]
2013/08/31(土) 23:44:00.56 ID:xp1O2wjRo
「何故アイドルになりたいと思ったのですか?」
今までほとんど喋らなかった、もう一人の進行役のおっさんが質問を投げかける
その質問は彼女を見たらまず思う事だろう、オレも気になっていたので丁度良かった
しかしその言葉を聞いた瞬間、彼女がピクリと身体を震わせたのをオレは見逃さなかった
「妹のためにも……」
「妹の?」
「あ、いえ……」
「宜しければ事情を聞かせてもらえますか?」
「はい……私の妹は生まれつき身体が弱くて」
「そんな妹に元気を与えれるアイドルになれたらいいなって……」
「その妹さんの世話はあなたが?」
「は、はい……」
無意識に反応してしまった理由はこれだったのか
妹の世話をしながらアイドルをするとなると、色々厳しい事もある
考えたくは無いが、妹の容体が急変した場合に仕事に穴を空けたりと
そばにいられない分、こちらも気遣う事も増える
シン……と、沈黙が室内を包む
彼女の重苦しい背景に誰もが声をかける事をためらっている
その中でオレだけ、頭をフル回転させ彼女の可能性を考えていた
(妹のためにアイドルになるという理由……)
(明るい表情をしているが、少し影を潜めた雰囲気は隠せない……)
(妹の世話をしながら……それが簡単じゃないのは彼女が一番分かっているだろう……)
(それでも、ここに来たってことは……)
その特別な理由は分からないけど、きっとアイドルでなければいけない理由があるのか
少し震える身体は頼りなさも感じるが、彼女ならどんな困難にも立ち向かっていける
そんな力強く素直で真っ直ぐな瞳に、オレは今までにない興奮を覚えていた
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