過去ログ - 栗原ネネ「ブレイブルー」
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7: ◆delkBMjP.Ce4[saga sage]
2013/08/31(土) 23:28:48.90 ID:xp1O2wjRo

「……あの人、辞めたそうですよ」

「ふーん……そうなんだ」

もう朝の研修は始まろうと言うのに、ポッカリと俺の斜め前の席が空いている
隣に座っていた眼鏡の男が、その席を見つめながら残念そうに語りかけてくる

あれから半月、十数人はいた同期と呼べる人達は今や半数になっていた
毎日毎日、名前も知らないお偉いさんに挨拶回りを繰り返しては
それが終われば運転手に雑用。想像以上の肉体労働が連日続いた

華やかな業界に憧れていた人達はすぐにいなくなり
日が変わるまで帰れない日は翌日から来なくなる人もいた

この生活に俺も辞めたくなる時が度々あったが
仕事の後は泥のように眠れる安堵感が気にいっていて
翌日には何にも考える事もなく、事務所に足を運んでいた

残っている人は歳の離れた人が多く
オレは一番年の近いこいつと一緒にいることがほとんどだった
こういうところで仲間意識が芽生えるのも自然の事だろう

オレの方が年下の割にはタメ口で話しても何も言わない
その割に、こいつは敬語というおかしな関係だが
オレとしては気を使わないでいれるのがありがたかった

「……辞めませんよね?」

「……いまのところはな」

投げ出した所で他に何かしたい事があるわけじゃない
少なくとも顔を出しているだけで、根性があると評価はされているわけだ
それならこの我慢大会も続ける価値はあるのだろう

「はい、みなさん! 今日も頑張っていきましょう!!」

トレーナーさんが元気よく挨拶をしながら研修室に入ってくる
しかし、誰が辞めたとかで動揺する様子は無い
きっとこういう事は何度も経験してきたんだろう

でかい会社ってのは残酷なとこも多いもんだな……
オレはどこか他人事のように、自分の置かれている状況を考えていた



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