過去ログ - 【とあるSS】壊れた窒素と、打ち砕く幻想
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2:K[saga]
2013/09/03(火) 12:15:01.80 ID:sBV5PyAU0
【壊れた窒素と、打ち砕く幻想】


〜少女は暗闇に染まる〜

 『暗闇の五月計画』。
 ――学園都市最強の超能力者の演算方法の一部分を意図的に植え付ける事で、能力者の性能を向上させようというプロジェクト。
 個人の人格を他者の都合で蹂躙する非人道的な計画だ。
 性能を向上させる、それは聞こえがいい。
 しかし、意図的に植え付ける、それはあまりに残酷で非道である。
 そもそも人格とは、植え付けられるものではなく、積み上げていくものである。
 その時の経験、環境によって自らが形成していくものだ。
 プロジェクトには『置き去り』という、親元の行方が分からない少年少女、もしくは赤ん坊を用いられた。
 非人道的な計画を進めるには、『置き去り』は最適な素材であったからだ。
 が、計画は座礁に乗り上げた。
 そもそも、自らが積み上げて形成する人格を、他者の手によって無理矢理植え付けるという行為に無理があったのだ。
 プロジェクトに参加していた者達は途方に暮れた。
 しかし、ある日。
 素材に思わぬ数値を示したものがあった。
 一つは攻撃性を示し、もう一つは防護性を示した。
 それは学園都市最強の超能力者の演算部分の一端にしか過ぎなかった。
 しかし、希望は見えた。
 計画は更に進められ、深く、暗く、更なる混沌へと落ちていった。
 …………
 ……
 …



 暗闇に、二つの影があった。
 影の周囲は瓦礫で埋め尽くされ、平坦な場所は一切無い。
 瓦礫の隙間からは煙や火が顔を覗かせている。

???「まさか貴女がこのような行動に出るとは超思いませんでしたよ」

 少女が呟いた。
 瓦礫から漏れた火に照らされた横顔はまだ幼い。
 小学生か、中学生くらいの子だろうか。
 肩の部分で切れた橙色のパーカーを羽織り、白地のシャツ。
 青色のショートパンツを履き、白く細い太腿を晒していた。
 少女と言うよりは、少年という印象が強いだろうか。
 起伏はほぼ無く、全体的に細身である。
 被ったパーカーのフードの下には、焦げ茶に染まったショートヘアが覗く。
 僅かに見える瞳には、どこか面倒臭そうなものを感じさせた。
 醸し出す雰囲気は禍々しく、光を感じない。
 子供であって、子供ではなかった。

???「……いえ、やはり訂正ですね。いつかこんな事をするだろうと、超思っていましたよ」

 少女が呟いた、その視線の先。
 そこにはパンクな格好をした少女がいた。
 起伏は少なく、小柄。
 少女も、パーカーの少女と同じくらいの年代のようだ。
 肩甲骨辺りまで伸びた黒髪を風に靡かせ、口角を吊り上げた。
 アクセントのつもりか、もみ上げ部分の髪だけが色を抜かれ、金色に輝いている。
 小柄な身体を締め付けるように、黒い革と鋲でできた衣服を身に纏う。
 全身を黒で統一した少女だが、しかし何故か所々に滑り気を帯びた光沢が見られた。

???「さっすが絹旗ちゃーん! 私の事よく見てんじゃん。気でもあるのかー?」

 黒髪の少女が冗談を含ませ、絹旗という少女に言葉を放った。
 見開かれた目はどこか相手を見下しているようなものを感じさせる。

絹旗「それで、これから超どうするんですか。黒夜」

 絹旗は少女の冗談を受け流し、淡々と呟く。
 黒夜と呼ばれた少女は、冗談を受け取ってもらえなかった事に溜め息を吐く。
 しかし、すぐに切り替え、自らの服を摘みながら言う。

黒夜「……とりあえず、シャワーだな」

絹旗「シャワー、ですか?」

黒夜「ああ。馬鹿共の臭い汁で、全身ドロドロにされちまったんだよ」

絹旗「それはそれは、超ご愁傷さまです」

黒夜「服も買わなくちゃいけねーな、こりゃ」



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