21:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 19:00:01.50 ID:bKqi92pu0
「ただ、わたくしに付いてきて下さいませ」
「わかった」
ついにこの日まで、行き先についてヒントすら聞くことはなかった。
たぶん到着するまで知ることはないのだろう。
まあ貴音が付いてこいと言うなら、例え地の果て天の果て、どこまででも黙って付いていきますよ。
「あ、あなた様、お願いが、あります」
「ん」
緊張を浮かべた貴音の目線が俺を釘付けにする。
「手を、つないで、下さいませ」
「うん」
そんなことを改めて言われてしまうとほぼイキかけます。
当たり前のように手を繋ぐ関係も良いけど、こういう緊張感を失ってしまうのは勿体ない。
貴音の気が変わらないうちに俺の左手は貴音の右手をとらまえる。
「なにがあっても、離さないで」
「わかった」
僥倖である。
こんなお願いをされてしまっていいのだろうか。
もうなんと言われようと離してあげないからな。
深呼吸ひとつおいて、覚悟を決めたと言う面持ちで貴音が席を立つ。
吸い寄せられるように俺も立ち上がる。
「では、参りましょう」
「うん」
右手でポケットから財布を取り出し、貴音の手を握ったままの左手に移す。
右手で札を取り出して勘定を済ませ、右手で財布をポケットにしまう。
喫茶店業の非正規雇用者風情にどんな目で見られようが構いはしないのである。
自動改札は縦並びにICOスタイルだと引っかかる可能性があるので、
横並びにおかあさんといっしょスタイルで通り抜ける。
魑魅魍魎でごった返すラッシュアワー。
貴音を痴漢から守らなければいけない。
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