過去ログ - 貴音「こひのとらはれ」
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23:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 19:03:22.68 ID:bKqi92pu0
「……」

「……」

あれから更に一時間以上停車せず走り続けている気がするがまだ止まる気配はない。
これはきっとたぶんなんかそういう珍しいタイプの長距離運行なのだろう。
今日はあいにく腕時計を着用していないので、
スマホの時間表示が頼りにならないとなると他に時間を確認する手段がない。
貴音に時間を聞いて、俺が貴音よりも時間のことを気にしていると思われるのは嫌だから絶対聞かない。

「……」

「……」

ついに減速の気配を感じる。
さすがにこれだけ走っていればもう終点だろう。
たっぷりと時間をかけて停車し、空気が抜けるような音と共にドアが開く。
ここは、きさらぎという名前の駅のようだ。

きさらぎと聞けば、やはり真っ先に思い出すのは世界の歌姫如月千早である。
しかし、この駅は如月ではなくきさらぎだ。
きさらぎという言葉に如月以外の漢字が存在するのかどうかは知らないが、
市名や駅名をわざわざひらがなで記すのには、存外面倒くさい理由があったりするものだ。

「着きました」

そう告げると、貴音はおもむろに腰をあげた。
俺は貴音の後に続くようにして電車を降りる。
俺たち以外の乗客に降りる気配はない、というかまだ全員寝ている。この国は労働者を酷使しすぎである。
だがここが終点なら運転手なり駅員なりが起こしにくるはずだから、まだ終点じゃないということか。

「ここが、目的地」

「はい、ここから少し歩いた所です」

電車のドアが閉まる、俺たち以外に降車した人は居ない。
やはりまだ終点ではなかったようだが、この路線はこれで採算が取れるのだろうか。
走り去る電車の音を聞きながら駅名の書いてある看板を眺め、ふと気付いた。

「なんで次の駅も前の駅も書いてないんだろう」

「……」

まあ地元の人間しか使わないようなローカル線であればこんなこともあるのだろう。
しかしまあなんというか四方八方がらんどうと言った趣きの場所である。
田舎の良さを表現して「なにもないがある(キリッ)」とか言われるとなんかもやもやするものだが
ここは本当になにもない。あるのはこの駅と、線路と、草原と、見渡す山々。
駅員も不在の無人駅のようだし、タクシーも見あたらない。
まあこんな駅をシマにしてタクシーを営業したところでやっていけないだろうことは俺にもわかる。
これがいわゆる秘境駅というやつなのだろう。


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