過去ログ - 貴音「こひのとらはれ」
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6:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/04(水) 18:36:08.59 ID:bKqi92pu0
「……」

怒ってないと貴音は言う。
貴音がそう言うのなら、それはきっと真実なのだろう。
むしろ怒っているときは怒っているとはっきり言うのが貴音の性格である。
だがそこにあるのが怒りではなかったとしても、あの一件が俺と貴音の関係に
余計な一石を投じてしまったことは火を見るよりも明らかなのだ。

「結婚するまでは、その……そういうことはなしで……」
とかそう言う理由があるのなら顔を思いっきり真っ赤にしながら言ってほしいだけなのだ。
そう言ってくれるだけで非常に興ふ安心出来るのである。
宗教とか信条とかトラウマとかおばあちゃんの遺言とか、なにかしら理由はあるはずだろう。
なにも教えてくれないのは、つらいのである。
愛する人のことをひとつでも多く知りたいと思ってなにがいけないと言うのだ。

あの日の失態が、実は俺の想像上の存在に過ぎないのではないでしょうかと感じてしまうこともある。
確かに犯してもいない失態を謝られたところで怒る気にはならないだろうが、
だとしたら、あの日以降お互いの部屋の行き来がぱったりと途絶えてしまったことの理由がつかない。
あの失態は間違いなく引き起こしてしまったことなのだ。

「なにも言ってくれないなら、謝るしかないじゃん……」

休憩室の換気扇が、俺の溜め息をせっせと外気に混ぜ合わせる音のみが響く。

ふと背後でドアの開く気配がしたが、俺は窓の外を眺めたまま、振り返ることはしない。
今現在ここのスタジオは全てが収録中のはずであり、
収録中にトイレはともかく休憩室を訪れるような輩にロクなやつはいない。
どーせ使いっ走り中の下っ端がサボり気分でふらりと寄ったというのが関の山だろう。
こう言う場合は、お互いがお互いに無関心を保つのが正解である。

備え付けのコーヒーメーカーから、コーヒーを紙コップに注ぐ音が聞こえる。
皆があくせく働く中でのんびりコーヒーを一杯やろうだなんてふてぶてしいやつである。
だがそいつはサーバーを元の位置に戻したかと思うと、俺に近づいてきた。


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