過去ログ - 【モバマス】「幸子、俺はお前のプロデューサーじゃなくなる」
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9:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/04(水) 21:33:57.00 ID:DVgSD76f0
 事務所に戻ると、緊張感のある空気が漂っている。
 複雑な視線がいくつもボクに向けられて、それだけで事情を察した。
 足早に廊下を駆けて、社長室へと向かう。
 息を切らせて、扉の前に立つ。
 呼吸を整え、意を決してノックをしようとした。
「――幸子には、まだ俺が必要です」
 手が止まる。自然と扉に耳を寄せるようにする。
「ご存知の通り、先日、幸子は持病のぜんそくを再発させました。俺がプロデューサーになってからは、一度としてなかったことです。レッスンの欠席も。今回の件が原因であることは明白です」
「だがね……」
「最近、幸子の成長は著しいです。ようやく良いリズムができてきたんです。ここで幸子にストレスをかけるのは、彼女の人生を大きく狂わせることになりかねません。お願いします、どうか……」
「ふむ……」
 よかった、という思いが込み上げた。
 これで何もかもが元通りになるんだ、とほっとした。
 帰ろう。
 扉に背を向け、踏み出そうとした足が、何故だか動かない。
 どくん、と心臓が大きく脈を打ったのを感じる。
 ボクの心の最も弱い部分が、震え出さんばかりに歓喜していた。これでもう二度と彼から離れなくて済むと。彼は言ったのだ。幸子には俺が必要だと。それは、ボクが彼を必要とし続ける限り、彼のそばにいられるということだ。ボクが道を踏み外しそうになった時、必ず彼は手を差し伸べてくれる。そうせずにはいられない人なのだ。なんて素晴らしいことかと思う。ボクが彼の後ろで間違い続ける限り、彼はそばにいて間違いを正してくれるだろう。彼の歩みを遅らせるほどにボクたちの時間はそれだけ伸びるのだ。
 くそったれ、死んじまえ。
 ボクは扉に向き直り、思い切り拳を叩きつけた。
 弱い自分を叩き潰すみたいに。
 必死にあがいて間違えるのはいい。悩み抜いた末に足を踏み外すのは勲章だ。だけど、失敗する為に失敗することだけはだめだ。彼が見せてくれた、世界で一番可愛くて、綺麗なボクに、それは相応しくない。そしてなにより、世界で一番可愛くて、綺麗なボクを、誰より信じてくれる、彼と、ボクのファンに、それは泥を塗る行為だ。


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