過去ログ - 【咲-saki-】京太郎「俺はハンターだ！！」【安価SS】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲-saki-】京太郎「俺はハンターだ！！」【安価SS】

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11: ◆LWTWR6E5O.[sage]
2013/09/05(木) 11:47:21.14 ID:OnHTJb9io
繁殖期が終わり少し暖かくなってきたこの頃でも周辺の山々には未だ雪が残っている。

陰になっていて融けないままの薄い雪を踏みしめ、冷たい風にさらされながら山を登っていく。

今は山の中腹辺り。今は少し優希が舞っているが平地で開けているところ。見通しとしては比較的良い場所である。

(なんてことはない、いつものことじゃないか。山に登り必要なものを取って帰る。それだけじゃないか)

そう言い聞かせる俺には背筋を走る強い悪寒が襲い掛かっていた。

それは寒さなのか、それとも違うものなのか。

俺にはわからなかった。いや考えられなかった。ここから早く立ち去りたいという一心で。

…一昨年の今日、ここで親父が死んだ。100メートルはあろう切り立った崖を見下ろしながら思った。

親父を殺したそいつは親父が最も脅威であると踏んでいた生物で周辺の村もかなりの被害に遭い、早急に対策を取る必要があった。

俺は今と似たような悪寒を感じ、親父を引き留めようとした。もう会えなくなるかもしれないと言って。

なのに親父はあっけらかんに笑い、大丈夫だと残し、いつものようにそいつを狩りに出かけていった。

親父は帰ってこなかった。あいつが喰ってしまったのだろうか。いやきっとそいつの死体を連れ、帰ってくると信じていた。

しかし、また別の村が被害にあった。あいつの仕業だった。

悔しかった。悲しかった。三日三晩泣き叫んでもすっきりもせずマシにもならなかった。

そして2年が経ち、親父の仇を討つためであり、最も近く尊敬した親父を見て俺はハンターになった。

だから俺は………これ以上考えても仕方ないな。

そう思い、必要なものを取りに行く。それは山頂にあるため、また雪道を登っていこうとしたその時、後ろから地響きと風の音がした。

「…まさか！？」

叫ぶと同時に振り返ると…あいつがいた。

橙色の体に所々青く血管が浮き出ていて、強靭に発達した前脚は滑空するためであろう薄い膜と鈍い光を放つ太く鋭い爪。

どんなものでさえも易々と砕けそうな牙を備えた顔は先の方にX字の傷跡を残していた。

親父を殺された恨み、本などでしか見たことがなく初めて見た実物の恐ろしさ、色々な感情が渦巻いていたものの足が踏み出せない。

あいつがこっちを見た。その眼は明らかに獲物を捕らえた眼だった。やはり蛇ににらまれた蛙のように動けない。

あいつがこっちに突っ込んでくる。まだ足は動かない。

(ああ…死んだな)

足を動かすのを諦め、そう悟ると同時に物凄い衝撃とともに吹き飛ばされ、あいつを見上げる形で意識とともに下へと落ちていった…

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