過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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◆tK49UmHkqg
[saga]
2013/09/18(水) 01:13:13.90 ID:DoNZuk/2o
そうか…あのとき、オスカー達のケンカを止めなかったのも、それが俺たちにとっては在るべきものだったって思ってたからなんだな。あのとき、この人は、俺たちに少しでも、本来やれるはずだったことをさせてやろうって、そう思っていたんだ。そんな俺たちを、戦場で指揮しなきゃいけない…その想いが、この自責にも似た感覚の正体だったんだ。中尉は、分かっている。ほとんどのやつらが死ぬだろうってことが。そしてそれを食い止めることができない自分を、責めているんだ…。
俺は…俺はこの人に、何を言ってあげられるんだろう?俺に、なにか彼女を助ける手だてがあるとして、それは一体なんだ…?
「中尉…聞いてください」
考えながらではあったが、気が付いたら俺はそんなことを口にしていた。
「俺は研究所で、普通の人生とは、きっと全然違った生活をしてきたんだと思います。親もいないし、学校なんて行かずに、実験に参加してばかりでした。それにこの能力のこともあって、俺たちは仲間意識だけは殊の外強いんです。俺にとっては、特にウリエラは、妹みたいな存在で、絶対に守ってやりたいって、そう思っています。俺は、優しくなんてないし、誰に何をしてやれるかはわかりません」
「ですが、俺は死にません。ウリエラも死なせません。他のやつらも、中尉、あなたのことも、きっと俺が守って見せます。だから一人で抱え込まないでください。俺は、部隊の指揮なんてできないし、面倒をみることもできないけど、だけど、戦闘でなら、少しは役に立てるはずです。それ以外のところでも、なんとかできる限りのことをしてみます。中尉一人で、この隊を守ろうだなんて、する必要ありません。俺にできることがあれば、言ってください。俺を頼ってください。俺はあなたをひとりで戦わせるなんてことは、絶対にしませんから…」
中尉は、俺を見ていた。頬にいっぱい涙をこぼしながら、まっすぐに俺を見ていた。
パサッと床にカードが落ちる音がした。次の瞬間、中尉は俺の腕をつかむと、思い切り引っ張ってきて、テーブル越しにすがりつくようにして俺の胸に顔をうずめた。腕を回してあげようと思って、ふと、間にあったテーブルが邪魔だったので脇へずらし、俺は中尉を抱きしめた。大きく見えていたのに、こうしてしまうと、まるでウリエラと体の大きさが変わらないように感じた。ブルブルと小動物みたいに震えている。
中尉、任せてください。たぶん、モビルスーツの操縦だけは、俺の方が中尉よりも上手です。中尉は、隊全体のことを見ていてください。俺は、局所戦で他の研究所の連中と協力して、可能な限り味方を守ります。だからもう、ひとりで悩まないでくださいね…。
そんな俺の想いが届いたのか、中尉はそのまましばらく、俺に抱かれながら、声を殺して泣いていた。
しばらくして泣き止んだ中尉は、腕の中で俺を見上げて
「アレクは、優しいね」
と言ってきた。これが優しいというんならそうなのかもしれないが、本音を言うと、もっと独りよがりな理由なんだ。
「ニュータイプは感じられる生き物です。誰かが苦しんでいたり、悩んでいたり、悲しんでいたりするのは、痛いほど良くわかるんですよ。それこそ、まるで自分がそう感じているんじゃないかって思うくらいに。だから、です」
「そう言う風に言えるところが、また、優しいんだよ」
その言葉の意味は良くわからなかったが…中尉は嬉しそうにしていたので、まぁ、良かったと思っておこう。
俺は中尉から腕を離した。しかし、中尉は俺との距離感をほとんど変えずに、まだ、俺を見ている。
「ポーカーは、私の勝ち、ってことで良いよね?」
「なんでですか、どう見ても俺が勝ってたじゃないですか」
「だって、イカサマしてたんでしょ?反則負けだよ」
中尉は、クスっと笑ってそう言った。まぁ、そう言うことにしておいてやっても良いが…問題は、だ。
「俺が負けたとして、何をしてほしいんです?」
そいつを聞いてみた。まぁ、最初に言ったとおり、無理難題を押し付けてくるようなら、拒否してしまえばいい。中尉のことだ。また、俺たちの年ごろらしい罰ゲームでも行ってくるんだろう。そうタカを括っていたが、中尉の“お願い”は意外なことだった。
彼女はまた、俺の胸ぐらをつかんで顔をうずめてきた。それから小さな声で
「今晩は、ここに居て」
と言った。妙なもので、胸の内に言葉にならない、暖かな感覚が灯るのが分かった。まんざらでもない…いや、素直に、頼ってもらえて、嬉しいとさえ感じた。
「中尉のご命令とあらば、断るわけには行きませんね」
その気持ちをそのまま言えばいい物を、どうしてか口にするには抵抗があったので、そうとだけ返事をして、俺もまた、中尉に腕を回した。
人の体温が、こんなにも心地良いなんてな。ふと、そんな思いが、頭をよぎった。
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