過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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4: ◆tK49UmHkqg[saga]
2013/09/13(金) 21:25:13.29 ID:/zOpzK8Q0

ソロモンが陥ちた。その報を、俺は研究所から引き払って移動中だった輸送船の中で聞いた。

アステロイドベルトへ撤退予定だったこの船も、その影響で進路をサイド3に変えていた。

目的は単純。研究所から輸送するつもりで持ち出した兵器のいくつかをサイド3が徴発したことと、そして俺達合格組を引き取るため…。

聞けば、軍部はすでに本土決戦を覚悟し、学徒動員まで行って戦備体制を整えようとしているらしい。

俺達のように戦闘の訓練を積まされた人間は、重宝されるんだろう。

「戦いたくなければ、逃がしてもやれる」

そう言った俺の身の回りの世話をしてくれていた人の良い担当の技術研究員の申し出を俺は断った。

逃げたって他に行く先もない。遅かれ早かれ、こうなる運命だったんだ。

船はサイド3についた。船に勲章を山ほど付けた軍人が乗り込んで来て、俺達について来るように言った。

俺の他に三人は、偉そうなそいつの後ろに黙ってついていく。車に乗せられ行き着いたのは、軍の営舎とらしい施設だった。

そこで俺達は別々にされた。一番年下の、ウリエラが半分涙目になって不安がる。

「大丈夫だ…また、すぐに会える。怖かったら、呼びかけてこい」

俺は彼女にそう伝えて、一瞬だけ意識を集中して彼女と感応した。

少し安心させてやれたのか、ウリエラは落ち着いた表情に戻ってうなずき、中年の男性士官に連れられて営舎の奥に消えて行った。

「貴様は…アレックス・オーランド、か。オーランド曹長、貴様の上官はこのイレーナ・バッハ中尉だ」

勲章の軍人が、若い士官を紹介する。

肩より長いブロンドを纏め、青い瞳に、薄く広い唇の、きれいな人だった。

「オーランド曹長。これより先は軍務であり、戦場です。甘えは許されません。良いですね?」

彼女は厳しい表情と同じように、厳しい口調で言った。

「はっ」

俺はそう答えて敬礼をした。彼女も敬礼を返してきて、それから

「営舎へ案内します、こちらへ」

と俺を先導した。集められていたホールを出て狭い廊下に差し掛かると、彼女はふぅ、とため息をついた。

「あぁ、ごめんね、あんな言い方で。戦況が苦しくなってきてから、いろいろと厳しくてね…上官がいないときは、楽にしてて良いわ」

「は…了解であります」

彼女の言葉に俺はそう返事をした。彼女がそう思いながらあんな言い方をした、ってのは感じ取れていたから別に驚きもしなかった。

「改めてまして、私はイレーナ・バッハ中尉。第一学徒部隊の第2小隊の指揮を任されているわ。歳は、二十歳で出身はサイド3。趣味は、古い映画を観ることと、読書。あなたは?」

中尉は思っていた以上に砕けた感じでそう聞いてきた。聞かれて、正直、戸惑った。

俺は研究所生まれで、語れるようなことはない…話せるとしたら、歳のことくらいか…

「自分は、アレックス・オーランド…今年で15になります…出身は、サイド6…」

「そう、よろしくね、アレク!」

俺の、そんな味気ない自己紹介に、そう言って満足そうな笑顔を見せてくれた。

なぜか、その笑顔が、強烈に脳裏に焼きついた。



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