過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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56: ◆tK49UmHkqg[saga]
2013/10/07(月) 15:13:49.23 ID:7/qYN4WS0

 <ははは!やったな、アレックス!>

キリの高笑いがきこえる。

「あぁ、なんとかなったよ」

<ははははは!隊長!アレックスが仇を取ってくれたぞ!>

仇?どういうことだ?おい…キリ…?

 たずねようと思った俺は、キリが常軌を逸していることに気がついた。声の限りに、無線の中で高笑いしている。

ケイス隊長の死を、見たのか、こいつは…。いつだ?ビームを撃ちあげてきたときか?それとも、上方からのバズーカで、か?

「キリ、キリ。落ち着け、頼む、落ち着いてくれ」

俺はキリの機体を捕まえて無線越しにそう言う。それでも収まらない彼女の笑い声に焦りを感じて、思わず機体を揺さぶってしまう。

<うっ、うわっ…わ、分かった、アレックス、お、落ち着くからやめてくれっ>

キリの悲鳴が聞こえた。思わず、キリも機体からマニピュレーターを離す。すると無線からキリの消え入りそうな声が聞こえてきた。

<大丈夫だ…すまん、ちょっとビビっちまっただけだ…>

「そうか…」

彼女の言葉にため息が出た。恐い、か。あのキリでもそう思うんだ。俺の全身にのしかかるようなこの重さも、おそらくそれと同じ物なんだろう。

出来るだけ表に出さずに、押し込んではいるが、それでも体の反応も、能力の知覚も十分に働かない。これが、恐怖、ってやつなんだ。

「キリ、ビビってんなら、漏らしてもいいんだぜ?」

俺はなるだけ明るい声でそういってやる。すると、今度はキリの、いつもどおりの明るい笑い声が聞こえた。

<ははは!そうだな、おい、エリック!さっきはからかって悪かったな!アタシも今日ばっかりは、チビっちまいそうだ!>

<だろう?先輩って呼べよ、お漏らしの>

キリの言葉にエリックもそう答えている。エリックも、キリの状態が心配だったんだろう。まったく、自分はついてくるだけで精一杯だってのに、良く頑張ってるよな、おまえも。

そう思ったら俺も落ち着いてきて、不思議と顔が緩むのを感じた。だが、こんなことをしている場合ではない。

編隊に戻って、状況を確認しないと…

キリの機体を引き連れて、俺は中尉達の方を目指して進路を替えた。次の瞬間、モニターがパッと明るく光って、辺りの視界が一瞬奪われた。

今のは…爆発!?でかいぞ、なんだ、なにがやられた!?

<ド、ドロス級、ドロワ!ご、轟沈!轟沈します!!>

無線から、誰かが叫ぶ声が聞こえてきた。ドロワが?あの大型空母が沈んだのか?

<ダメだ、もう終わりだ!>

<て、撤退だ…誰か、撤退の支持をくれ!>

あちこちから、そう言う無線がきこえてくる。くそ!ダメだ、この混乱じゃ、戦線の維持は難しいぞ…?!

「中尉!」

<…ア、アレク!?>

俺は中尉のすぐそばに取り付いて無線で彼女を呼び出す。

「落ち着け、中尉!周りが後退をはじめてる。このまま俺達だけでここを維持するのは不可能だ!すぐにでもラインを下げさせないと!」

<分かってる…!学徒隊!残存機は至急報告を!>

<こちら第4小隊のデイビット、隊長とモーリスは戦死。今は、第3、第9小隊の残存機と3機で編隊で戦闘を続行中>

<こちら第5小隊!第3小隊とは敵の強襲で分断され、孤立している。現在はエリアB9。被撃墜はないが、一度撤退してそっちに合流したい>

無線が返ってきた。たった、2機分…うちは、小隊が12もあったんだぞ…?36人居たんだ。

それが、それが、やっぱり…今は、たったの、11機だってのかよ…?研究所で一緒だったやつらも、もう、やられちまったってのかよ…!

 ダメだ、このままじゃ…このままここに居たら、みんな死んじまう!ウリエラも、居れ―ナも、キリもエリックも、守れない…撤退だ…撤退を…
 


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