過去ログ - ジオン女性士官「また、生きて会いましょう」学徒兵「ええ、必ず」
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60: ◆tK49UmHkqg[saga]
2013/10/07(月) 15:16:42.71 ID:7/qYN4WS0

 連邦機が俺を狙って撃ってきた。俺はそれを避けなかった。マシンガンの弾が機体にはじける鈍い音がする。

それでも俺はまっすぐにゲルググに突っ込んだ。ゲルググが、回避するつもりか、機動を変えた。だが、俺にはそれが手にとるように把握できていた。

 俺は加速したままにその機動に機体を合せて、ヒートホークをつきたてた。

援護に来たつもりらしいゲルググに、斬り付けたほうを投げ飛ばして2機一緒に蹴りつける。

「うわぁぁぁ!」

俺は2機をまとめて何度も何度もヒートホークで斬った。あちこちから、まるで血を噴出すように、蒸気や、油圧が吹き出てくる。

それでも、俺の気持ちは納まらない。

 気付いたとき、俺は、中尉にゲルググから引き離されて、連邦が撃ってくる射線の中を飛んでいた。

<アレク!アレク、聞いて!>

「イレーナ…」

<お願い、落ち着いて…あなたは死んじゃダメ…!約束したでしょう!?>

イレーナの声は、涙でくぐもってきこえた。だけど、イレーナ…ウリエラが、死んだんだ。ずっと一緒だったのに…

妹みたいに可愛くて、ずっと俺をしたってくれていたのに…あいつが、あいつが、殺されたんだ…!

 連邦機の射撃が、イレーナの機体を捉えた。ビームが機体の表面で弾けて、バランスを崩す。

「イレーナ!」

<だっ、大丈夫!直撃じゃないわ!まだ動ける!>

イレーナの力強い声を聴いて、俺は少しだけ、気持ちが整うのを感じた。そうだ、まだ、俺たちは生きてる…逃げるんだ、ここから…!

「イレーナ」

<何?>

「逃げよう…どこか、戦いのない場所へ…」


<うん…>

「もうこんなのはたくさんだ。誰も守れず、大事な人が死んでいく…こんな場所、俺にはもう、耐えられない…」

<ええ、私も…。行きましょう。戦いの要らないところへ…>

 再び、イレーナの機体にビームが弾けた。イレーナ機が、制御を失うのが分かった。

バーニアをやられたのか、宇宙空間に黒煙を吹きながら不規則な回転を起こしつつ、俺から遠ざかっていく。

「イレーナ!」

そう叫んだ俺の機体にも、ビームが襲い掛かってきた。直撃を避ける操作をする暇も、心の余裕もなく、表面を弾け、脚を貫き、腕をもぎ取っていく。

 イレーナ機が、暗闇の中に微かな光を放って爆発するのが、ひび割れて、ノイズの激しいモニターに映った。

 もう、自分が何を感じているのか、何を考えているのかすら分からなかった。

俺はただただ、胸の奥から湧き上がる激情に、全身を振るわせることしか、出来なかった。

「うぅ…ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

そう叫んだのと、俺の機体をビームが貫いたのは、ほとんど同時だった。

 


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