15:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/15(日) 00:57:55.80 ID:t5UYVlVE0
「気を抜いてはいけませんよ。全身全霊を込めて、集中するのです」
そうすれば、魚どころか竜さえ釣れますよ、と彼女は付け加えました。
「竜でも、ですか……」
「ええ。竿の先、糸の先に……全身の気を、込めてください」
私は祈るように竿を握りしめ、気を整えます。
「私は……あなたの『答えを出したい』という気持ちに応じて、あなたの元に来ました」
また、竿がぴくり、と動きます。
「一点の濁りもない、純粋な心で竿を引いてください。心を、純粋にするのです」
ぐいぐいと、竿は水底へ引かれてゆきます。
「邪な気持ちも、不安や恐れも、何もかもを捨てて……」
力を込め、竿を奪われないよう必死にこらえます。
「この大自然に、その身を委ねてください」
ああ、水底が見える。
糸の先に喰らいつく、竜のその姿さえ、見える。
大自然の力を、糸の先に生まれた宇宙を。
目で、耳で、肌で、心で。
感じる。
感じる。
手に取るように、最初から知っていたかのように。
――この世界の全てを、いま、私は感じている。
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